「会社員をしながら個人事業主になりたい」
「収入を増やすために副業をしたい」
雇用されずに個人で事業を営む個人事業主になったり、副業をしたりする理由は人それぞれです。
しかし本当に、会社員をしながら個人事業主になることは可能なのでしょうか?そこでこの記事では、会社員をしながら個人事業主になれるのかを解説していきます。
副業で開業届を出す方法やメリット、注意点についてもご紹介していますので、スムーズに個人事業主になれるよう、ぜひ最後まで読んでみてください。
会社員をしながらでも個人事業主になれる
結論を言うと、会社員をしながらでも個人事業主になれます。会社員をしながら、税務署に開業届を提出するだけで、個人事業主として事業を始められます。
もちろん会社の規則で副業が禁止されている場合は、会社の罰則対象となる恐れがあります。副業が可能かどうかしっかり確認した上で問題がなければ、個人事業主になることはできます。
個人事業主でなくても副業はできる
会社員として副業をしたい場合、必ずしも個人事業主になる必要はありません。たとえば副業としてオークションサイトで不用品を売りたい場合は、開業届を出さなくても罰則等はありません。
ただし開業届が必要なくても、副業で年間20万円以上の所得がある場合は、税金を支払うための確定申告が必要となります。会社の仕事とは別のアルバイトも、個人事業主になる必要はありません。
会社員と個人事業主の違い
会社員と個人事業主には、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは個人事業主の特徴に注目しながら、それぞれの違いについてご紹介していきます。
働き方の違い
会社員は会社に雇用されて働きますが、個人事業主は取引先を探して仕事を請け負います。個人事業主がどのように働くかは、すべて自身で決める必要があります。
また個人事業主は、会社員のような雇用保険・労災保険などの社会保険は受けられません。自身で国民健康保険に加入したり、扶養家族として社会保険を受けたりする必要があります。
加入する年金も異なり、個人事業主は国民年金、会社員は厚生年金です。会社員が加入する厚生年金は収入が増えると支払う金額も増えるため、将来受け取れる年金額は会社員のほうが多くなる傾向にあります。
収入の違い
個人事業主は、会社員のように月の給料が決まっていません。仕事量に応じて収入も変化します。
一方で、多くの仕事を得て効率化できれば、仕事量を抑えつつ収入アップも可能です。事業が軌道に乗れば、プライベートの時間も十分に確保できるでしょう。
会社員で個人事業主になるメリット
会社員のまま個人事業主になることには、以下のようにさまざまなメリットがあります。
- 簡単に開業できる
- 屋号を使える
- 経費を計上できる
- 赤字を繰り越せる
- 青色申告ができる
- 働く時間を自分で決められる
- 自分の意志で事業内容を決められる
- 収入を増やせる
これらのメリットを、さらに詳しく解説していきます。
簡単に開業できる
個人事業主は開業が簡単です。法人を設立する時のように煩雑な手続きがなく、費用も発生しません。事業を廃止するのも自由です。
屋号を使える
個人事業主として開業すると屋号が使えるようになります。屋号とは、会社でいうと会社名に相当します。
屋号があると、取引先に開業していることを理解してもらえます。信用されて仕事を受注しやすくなるでしょう。もちろん個人事業主になっても、屋号を使わずに個人名・ハンドルネームで活動することは可能です。
経費を計上できる
個人事業主として副業をしている場合、その費用を経費として計上できるので節税対策になります。たとえば自宅を仕事場としているケースでは、事業に使っている分の光熱費や、家賃の一部を経費にできます。
青色申告ができる
個人事業主は青色申告ができるので、節税につながります。
納税方法には青色申告と白色申告の2種類があり、青色申告を選択すると最大65万円を特別控除してもらえます。一方、白色申告には特別控除はありません。
ただし青色申告を行うには「所得税の青色申告承認申請書」を、開業から2か月以内に税務署に提出する必要があります。
赤字を繰り越せる
開業してから数年間、事業が軌道に乗らない時期があるかもしれません。このような場合でも青色申告にしてあれば、条件を満たしていれば最大3年間の赤字の繰り越しが可能です。赤字を繰り越せると景気の影響による仕事の増減にも対応しやすくなるでしょう。
働く時間を自分で決められる
会社員は「9時から17時まで」というように就業時間が決められていますが、個人事業主は働く時間を自分で決められます。
たとえば会社から帰宅後の20時から22時までを副業の時間に充てる、ということも可能です。ただし自由な分だけ、自分を律することは必要でしょう。
自分の意志で事業内容を決められる
どのような仕事をするか、事業内容を自分で決められるのが個人事業主です。取引先も決められるので、会社員よりも自由度が高いでしょう。
収入を増やせる
「会社員の給与だけでは満足できない」「さらに将来の蓄えを作りたい」という場合に、個人事業主の分の収入を追加できます。収入源が複数あると、会社に依存しない働き方ができるでしょう。
将来、個人事業主として独立を目指している場合も、会社員として安定した収入を得ながら独立の準備ができます。ただし会社外の業務が発生するので、合計の仕事時間が増えてしまうことに注意が必要です。
会社員が個人事業主になる際の注意点
会社員が個人事業主になる際は、以下のようにさまざまなことを考えておかなければなりません。
- 収入が安定しない
- 社会的な信用が低い
- 自身で税金を納める必要がある
- 会社とのトラブルが起こる場合がある
収入が安定しない
個人事業主は会社員とは異なり、毎月の収入額が一定ではありません。仕事で成果を出した分しか収入を得られませんし、会社員のようなボーナスもありません。
もちろん会社員よりも高収入を目指すことはできますが、収入が安定しない時期も考慮に入れて事業を行う必要があります。
社会的な信用が低い
以前と比べると個人事業主の方が増えてきたので、社会的な信用は向上しつつあります。しかし会社員と比べると、いまだに社会的信用が低いと思わざるを得ない場面はあります。
たとえばクレジットカードを作る際に、個人事業主は会社員よりも審査通過の難易度が高い傾向にあります。そのため会社員から個人事業主として独立する場合、会社員のうちにクレジットカードを作っておくとよいかもしれません。
自身で税金を納める必要がある
会社員は、給与から税金を天引きしてもらえますが、個人事業主は自身で税金を納める必要があります。そのため毎年、税務署に納税する手間が発生します。
会社との調整をしっかり行う必要がある
会社で副業が禁止されている場合は、懲戒解雇の対象になることがあります。こっそり副業などは絶対にしないでください。
副業が許可されている場合であっても、会社への届け出が必要なケースもあります。また、業務に支障が出ないように時間管理、自社との利益相反を考えるなどを徹底する必要があるでしょう。副業の所得に関する税金の申告も忘れずに行わなければなりません。
会社員で個人事業主になるタイミングは?
適切なタイミングで会社員が個人事業主になると、得することが多くなります。以下のタイミングで個人事業主になるのがおすすめです。
- 年間所得が20万円を超えたら
- 継続的な報酬があるとき
- 数百万円の事業所得があるとき
年間所得が20万円を超えたら
副業で年間所得が20万円を超えた場合に、個人事業主になるのを検討すると良いでしょう。
年間所得が20万円を超えると所得税の支払いが必要で、確定申告が必要になるからです。この場合に開業届を提出していると、節税効果の高い青色申告を行えるでしょう。
継続的な報酬があるとき
継続的な報酬があるときも、個人事業主になるのを検討しましょう。今後所得が増える可能性があるからです。
結果的に年間の所得が増えたという場合は、その年の青色申告申請が間に合いません。継続的な報酬がある場合には、開業届と同時に青色申告の申請を先にしておくことをおすすめします。
数百万円の事業所得があるとき
個人事業主で数百万円の事業所得がある場合も、個人事業主になるのはおすすめです。青色申告では最大65万円が控除されるので、節税効果が高いです。
個人事業主でなくても副業はできますが、この場合は最大10万円まで控除される白色申告しかできません。そのため数百万円の事業所得がある場合は、個人事業主になったほうが金銭的なメリットが多くなるのです。
もちろん手続きの手間はかかるので、時間的な余裕があるときに届け出をすると良いでしょう。
会社員が個人事業主になるための手続き方法
会社員が個人事業主になるには、特定の手続きを行う必要があります。具体的にどのような手続きが必要なのか、以下で解説していきます。
- 開業届の提出
- 青色申告承認申請書の提出
- その他の手続き
開業届の提出
所轄の税務署に開業届を提出するだけで、個人事業主になれます。提出しない場合の罰則はありませんが、開業してから1か月以内の提出が推奨されています。
国税庁のホームページからのダウンロードや、税務署の窓口で開業届を受け取れます。必要事項を記入し、オンラインまたは税務署の窓口で提出しましょう。
開業届は1枚のみなので、記入は難しくありません。疑問点・不明点がある場合は、税務署の窓口に相談してください。
青色申告承認申請書の提出
青色申告を行いたい場合は、その年度の3月15日までに、開業届と一緒に青色申告承認申請書を提出しましょう。最大65万円までの所得控除が受けられます。
ただし白色申告と比べると、青色申告は手続きが多くなります。また、青色申告を申請しない場合は、自動的に白色申告になる点も留意しましょう。
その他の手続き
最低でも開業届、節税したい場合は青色申告の申請が必要です。またその他にも手続きが必要なケースがあるので、以下でご紹介していきます。
従業員を雇用する場合
従業員を雇用する場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届書」を雇用した日から1か月以内に税務署に提出する必要があります。なお、開業時にすでに従業員がいる場合は、開業届の項目で届け出できるので、この書類を提出する必要はありません。
また以下の届け出も、忘れずに行いましょう。
- 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書…家族従業員への給与を経費にする場合に必要
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書…毎月必要な源泉徴収の納付を年2回にできる(従業員が10人未満の場合のみ)
個人事業主になった後に必要な手続き
個人事業主になった後にもさまざまな手続きが必要なので、以下で簡単にご紹介していきます。
項目 | 必須か任意か |
国民健康保険 | 必須 |
国民年金 | 必須 |
確定申告 | 所得が20万を超えた場合必須 |
小規模企業共済 | 任意 |
事業用銀行口座の開設 | 任意 |
国民健康保険と国民年金への加入や、所得が20万円を超えた場合の確定申告手続きは必須です。
小規模企業共済とは、毎月1,000円~7万円の範囲で積み立てを行い、事業を廃止する場合や退職に備える積立制度です。また、事業用銀行口座を開設することにより、事業の収支を把握しやすくなるので、日常の仕訳・経理の手間を減らせるでしょう。
会社員と個人事業主を両立するポイント
会社員と個人事業主を両立させるには、以下のポイントに気を付けましょう。
- 適切に副業に時間配分をする
- 家族に理解してもらう
- 多くの人がうまくいっている事業を選ぶ
適切に副業に時間配分をする
会社員との両立をするには、個人事業主の仕事に適切に時間配分する必要があります。副業の時間は限られるため、計画的に事業を進めていきましょう。
どの時間帯に副業をするのか、スケジュール管理が欠かせません。睡眠時間が確保できなくなると本業に悪影響が出る恐れがあるので注意しましょう。
家族に理解してもらう
家族がいる場合は、個人事業主との兼業を理解してもらうことが欠かせません。会社員以外の仕事もすると、家族との時間が減ってしまうかもしれないからです。
どのくらいの時間を副業に使うのか、どのような目標で副業をするのか、という情報を家族と共有すると理解を得られやすいでしょう。
多くの人がうまくいっている事業を選ぶ
多くの人がうまくいっている事業を副業として選ぶと、事業が軌道に乗りやすくなり、会社員との両立がしやすくなります。たとえばWebライティングや動画編集などは、多くの方が副業として成立させています。
独創的なアイディアを実現するために起業するのが悪いというわけではありませんが、社会に受け入れられるまでに時間がかかることが多いです。すでに社会的に認知されている事業を選んだほうが、会社員と両立しやすいでしょう。
個人事業主として新たなスタートを切ろう
会社員として働きながら個人事業主になることは可能です。副業の形で事業を始めるには、税務署に開業届を提出するだけでスタートできます。開業届を出すと、節税効果のある青色申告が利用できるメリットがあります。開業届を提出しない場合でも、年間所得が20万円を超えると確定申告が必要になることは覚えておきましょう。
また、副業OKの会社に勤めている場合であっても、トラブルを防ぐ意味でしっかり会社に詳細を伝えるなど怠らないようにしましょう。
個人事業主になると事業内容や働き方を自由に決められ、経費の計上や赤字の繰り越しなどさまざまなメリットが得られるでしょう。手続きの負担は増えますが、事業が軌道に乗れば、会社員の収入以上の高収入も目指せます。
個人事業主に興味がある方は、まず開業届の提出を検討し、新しい働き方をスタートしてみてください。
執筆者名Ruben
編集企画CWパートナーシップ・フリサプ編集チーム