パラレルキャリアは、フリーランスの自由度を維持しつつ、収入やスキル面での安定性や成長の機会を広げる効果的な手段です。
現在フリーランスとして活動していて、これからのキャリア形成や収入の安定化を模索している方も多いのではないでしょうか。
複数の本業を持つことで自己マネジメント能力の向上へつながり、収入やキャリアのリスク分散にもつながります。
また、多様なキャリアを追求することで、変化の多い現代社会においても柔軟かつ安定的に活躍できる道を切り開くことができるでしょう。
本記事では、フリーランスや個人事業主にパラレルキャリアをおすすめする理由や始めるメリットについて解説します。
パラレルキャリアの定義
パラレルキャリアとは、「本業を続けながら別のキャリアを中長期的に育てていくこと」を指します。
経営学者ピーター・ドラッカー氏は1999年に出版したその著書の中で、パラレルキャリアの定義を「一つの組織や仕事に固持するのではなく、第二の活動をすること」としています。
その活動は必ずしもビジネスに限られるわけではなく、ボランティアや趣味を活かした講師など、好きなことを続ける活動も含まれます。
また、将来的に独立や開業を見据えている場合には、新たな人脈形成を可能とするパラレルキャリアは必要な働き方であるといえるでしょう。
パラレルキャリアと副業の違い
パラレルキャリアの主な目的には、キャリアアップや自己実現、社会貢献などが挙げられます。
第二のキャリア形成を目的としており、その活動はビジネスに限定されるものではありません。
報酬よりも、自己成長やコミュニティへの貢献などがモチベーションになるという考え方です。
一方で、副業とは収入アップを目的として、本業をこなしつつ空いた時間を活用することを指します。
パラレルキャリア | 副業 | |
目的 | 収入だけを目的としない活動 | 収入を得ること |
内容 | 趣味活動やボランティア活動など | アルバイトや株式投資、アフィリエイトサイトの運営など |
特徴 | すべてのキャリアを本業とする取り組み方 | 本業の空き時間に行う別の仕事 |
パラレルキャリアの例としては、ボランティア活動から始めたものが、ソーシャルビジネスとして事業化につながるケースもあります。
第二のキャリアを中長期的に成長させることで、いずれは本業にすることや独立を目指すといった、働き方を多様化させることにつながるのです。
また、副業とパラレルキャリアを区別するために、「複業」という表現をすることもあります。
「副業」は副収入を得ることを指しますが、「複業」は複数の本業を並行して取り組む働き方です。
なぜパラレルキャリアが注目されているのか
近年、転職の一般化やフレックスタイムの導入、国による副業・兼業の促進などワークスタイルの多様化が進んでいます。
これまで当たり前とされていた終身雇用や年功序列といったシステムが、今後も続くとは限りません。
定年後も年金受給だけでは生活が成り立たなくなるという予測のもと、70~80代になっても働き続ける人は増える傾向にあります。
定年退職後の生活に対する不安や考え方の変化によりワークスタイルも多様化しており、1つの仕事だけを生涯貫くというのは現実的ではなくなりました。
また、コロナ禍を境に、リモートワークが普及してきたのも大きな変化といえます。
リモートワークで働きながら旅をしたり、地方へ移住したりと自由度が増し、フリーランスで活躍する人も増えてきました。
このように多様化するワークスタイルのひとつとして、新しい働き方を確立させるパラレルキャリアは、その取り組みが注目されています。
個人のスキルアップやマネジメント能力の向上は企業にとっても有益なため、パラレルキャリアを推進する企業は今後も増える傾向にあるといえるでしょう。
パラレルキャリアを通してフリーランスが得られるメリットとは
収入の不安定さが課題であるフリーランスの働き方のひとつとして、複数の収入源を確保できるパラレルキャリアが選択肢に挙げられます。
収入面のリスク回避だけでなく、モチベーションの維持や人脈形成につながるため、将来的に大きなプロジェクトに挑戦したい場合に有効な手段といえるでしょう。
報酬だけではなくやりがいを感じたい、人間として成長したいという向上心を持つことも、豊かな人生を送るうえで大切なことです。
それでは、フリーランスがパラレルキャリアを始めるとどんなメリットがあるのかを解説します。
複数の収入源で安定を得られる
フリーランスは収入が不安定になりがちですが、パラレルキャリアを始めることにより複数の収入源を確保できるため、安定性を高めることができます。
また、すでに安定した収入を得ている場合は、収入を気にせず自由なキャリアに挑戦できるでしょう。
さらに、はじめは収入に直結しなくても、キャリアを積むことにより収入を伴うビジネスへ発展することも珍しくありません。
NPO法人の設立や、趣味で始めた創作活動の人気に火が付き、EC事業へ発展するケースもあります。
子育てや介護などのプライベートによる経験から、第二のキャリアをスタートさせる人もいるでしょう。
仮にクライアントからの依頼が減ってしまっても、複数の分野でプロジェクトを並行して持つことで、柔軟に対応できるスキルが身につくのがパラレルキャリアのメリットといえます。
現在のキャリアとのシナジー効果が期待できる
複数の職業を持ち、新しい人脈形成やスキルアップをすることにより、現在のキャリアの課題に気づけるメリットもあります。
異なる分野のプロセスを経験することで、これまで当たり前だと思っていたことの問題点やその解決策のヒントを違う視点から得られるチャンスになるでしょう。
さらに、新たな知識や経験が本業に活かせるため、結果的にそれぞれのキャリアにとってプラスになるケースもあります。
キャリアのリスク分散ができる
フリーランスは市場の変動やクライアントの都合で収入が影響を受けるケースも少なくありませんが、パラレルキャリアによってリスクヘッジが可能です。
例えば、技術トレンドの変化や業界の衰退による影響があっても、他のキャリアで活動していればそちらに比重を置いても良いでしょう。
また、子育てや介護などのライフステージの変化で本業を一時的に休むことになっても、第二のキャリアは自分のペースで続けられます。
自分を取り巻く状況が変化してもキャリアを途絶えさせることなく、将来につなげていけるのがパラレルキャリアのメリットです。
自己成長とモチベーションの向上につながる
パラレルキャリアは新たな挑戦や達成感を得る機会が増えるため、全体的なモチベーション向上につながります。
フリーランスにとって、マンネリ化や成長の限界など、モチベーションの維持は大きな課題のひとつといえるでしょう。
しかし、パラレルキャリアを始めて異なる分野の仕事に触れると、自己成長や新たな視点を得ることが可能となります。
視野が広がると新たなアイディアが浮かび、今まで見えてこなかった改善点が見えてくることもあるでしょう。
一人で仕事をすることが多いフリーランスは、人との交流を積極的に取り入れていきたいところです。
新たなビジネスへの可能性が広がる
フリーランスにとって、パラレルキャリアを始めることは新しいスキルを習得し、自分の市場価値を高める絶好の機会といえるでしょう。
例えば現在デザインの仕事をしていて、マーケティングやビジネス戦略のスキルを学ぶことで、クライアントに対してより総合的な提案が可能となります。
また、異なるジャンルのビジネスに関わることで視野が広がり、新たなビジネスの創造につながるかもしれません。
パラレルキャリアの注意点とは
パラレルキャリアには、自己管理や情報管理に気を付けなければならない点やモチベーションをどう維持するかなど、フリーランスとしての活動と共通する課題があります。
漠然と第二のキャリアを始めるのではなく、いつまでに達成するといった期限を決めて取り組むことも課題解決の一つの方法です。
それでは、パラレルキャリアの注意点について、具体的に解説します。
明確な目標を持つ必要がある
パラレルキャリアは、明確な目標を持たなければ中途半端な結果に終わってしまう可能性があります。
充実感を得る目的で始めたパラレルキャリアが、かえって負担になってしまうようでは意味がありません。
具体的なゴールの設定をせず、ボランティアやスキルアップに向けた取り組みを行っても、モチベーションの維持が難しくなるでしょう。
いつまでに何を達成したいか目標を立て、思い描いた将来像を実現させるために必要なことを、パラレルキャリアとして進めるのがおすすめです。
自己管理ができないと持続が困難
複数の本業を持つパラレルキャリアでは、それぞれのキャリアに充てる時間を管理するタイムマネジメントスキルが必要です。
それぞれの仕事が忙しくなるとキャパオーバーになったり、1つを優先するばかりに他の活動に手が回らなくなったりすることもあるでしょう。
パラレルキャリアを始めたばかりで一時的に管理がしにくくなるならともかく、ずっとキャパオーバーが続くようなら本末転倒です。
また、会社員の場合は一定の収入を得ると確定申告が必要になるため、事務作業の時間も取らなければなりません。
その点、複数の案件をこなすケースが多いフリーランスは、パラレルキャリアを始めても管理がしやすいといえます。
どちらにしても、短期的な仕事としてではなく、第二のキャリアとして中長期的に考えて計画を立てることが重要です。
プライベートの時間が取りづらくなる
パラレルキャリアには、仕事が増えるとやるべきことも増え、プライベートの時間が取りづらくなるという注意点もあります。
特にパラレルキャリアを始めるときは、プライベートの時間を削って集中する必要も出てくるため、家族と暮らしている場合は、家族の理解を得ることも重要です。
しかし、いつまでも時間コストをかけているようでは、体力や精神的にも限界を迎えます。
いくら理想の働き方ができていても、家族や友人との関係が悪くなってしまっては意味がありません。
徐々に業務の効率化を図り、休息やプライベートの時間も確保するようにしましょう。
情報セキュリティスキルが必要
例えば会社員の場合、本業で得た情報を第二のキャリアで活用したいと思っても、同じ端末を使用する際に細心の注意を払わなければ情報漏洩になってしまうこともあります。
そのため、パラレルキャリアを始めるには、情報セキュリティスキルが必要です。
情報漏洩は会社に大きな損害を与えるだけではなく、仕事を失う原因にもなりかねません。
PCやアプリケーションのセキュリティやパスワードの管理、定期的なバックアップの作成などで、情報セキュリティのリスクを低減しましょう。
場所を選ばずに仕事できるのがフリーランスの魅力ですが、カフェなどの公共スペースでPCを使用するとセキュリティリスクが高まるため、控えた方が良いでしょう。
企業の守秘義務に抵触する可能性がある
フリーランスであれば、業務委託契約と同時に秘密保持契約を締結しているケースがあります。
万が一、秘密保持契約に違反してしまうと、信用に関わるだけではなく損害賠償を請求されることがあるため注意してください。
会社員が本業の場合、企業によっては副業の禁止や一定の規律があるため、会社の方針を確認するのが重要です。
ボランティアなどの報酬が出ない活動についても、情報漏洩などが理由でパラレルキャリアが禁止されるケースも見られます。
そのため、パラレルキャリアを始める前に会社の就業規則に目を通したり、上司や人事部に相談したりしましょう。
副業が許可されている場合でも、条件や届け出の必要がある場合もあるので、注意が必要です。
フリーランスにおすすめのパラレルキャリアの進め方
収入に直結することだけではなく、趣味や特技を活かせるのもパラレルキャリアの魅力です。趣味であっても知識が豊富であれば、キャリアとして活かすことができます。
例えば、イラストが得意ならSNSへの発信がきっかけでビジネスにつながる、または講師として活躍できるチャンスもあるでしょう。
趣味の延長なら本業が行き詰まった際に良い気分転換となり、モチベーションを保つ助けとなるかもしれません。
ここでは、フリーランスがパラレルキャリアを始める具体的な方法について紹介します。
小規模から始めてみる
パラレルキャリアを始める際は、リスクを抑えた形でスタートするのがおすすめです。もし失敗しても、現在の仕事への影響が少なければ再びやり直すことができるからです。
社会貢献や地方創生、ボランティア活動から始めるのも良いでしょう。
少額の投資や短時間で済むプロジェクトから始め、結果的に少しずつビジネスの拡大をしていくのが理想的といえます。
勉強会や交流会へ参加する
専門的なスキルを得たいと考えている場合、勉強会やセミナーなどに参加するのもおすすめです。
参加費用が無料の勉強会もあるため、自分に合った予算や内容を選択しましょう。
時間の確保が難しい場合は、オンラインで開催するセミナーが多数あります。興味のあるジャンルに挑戦してみるのも良さそうです。
また、異業種の交流会や情報交換の場は、第二のキャリアを始めるヒントを得られる可能性もあります。
- トレンドのリサーチができる
- 最新の情報を交換できる
- 人脈形成ができる
パラレルキャリアについて具体的な内容が決まっていない方は、きっかけとして参加してみることをおすすめします。
別のジャンルやスキルとの相乗効果を目指す
現在自分が持っているスキルにプラスして、自分の強みを発揮できる分野を見つけるのも一つの方法です。
例えば、日頃の業務がデザイン中心なら、マーケティングやライティングなどのスキルをプラスで得られれば、組み合わせることで仕事の幅が広がります。
スキルアップにより業務範囲が広がり、クライアントから幅広い業務を請け負うことができれば、収入アップにつながり安定的な収入を得ることが可能です。
このように、第二のキャリアで得たスキルや知識は、本業と組み合わせて活かすことができます。
また、これまでのビジネスとは全く違ったジャンルのスキルアップを目指すことで、収入面で不安定なフリーランスのリスク軽減につながります。
なぜなら、ニーズの変化によりクライアントが減っても、他分野の事業に取り組んでいれば柔軟な対応が可能だからです。
スキルアップにより対応できることが増えれば、別の企業を紹介されたり大きな仕事を任されたりすることも考えられます。
また、新たな人脈を築くことができれば、そこから新たなビジネスの縁に恵まれるかもしれません。
最終的に法人化を目指す
パラレルキャリアが軌道に乗り始めたら、自分一人のビジネスからチーム運営などスケールアップを目指す方法もおすすめです。事業が大きくなってきたタイミングで、法人化を検討しましょう。
法人化をすると社会的信用度が上がり、企業間取引の幅が広がる可能性が高くなります。
働き方を選択する立場から提供する立場へ、パラレルキャリアのゴールを定めましょう。
まとめ
パラレルキャリアとは、自己実現や社会貢献などを目的として取り組む第二のキャリアです。
必ずしも収入につながるとは限りませんが、人脈形成やスキルアップを経て将来的にビジネスへつながることはめずらしくありません。
働き方が多様化している現代では、さまざまなスキルを身につけることで選択肢が広がります。
パラレルキャリアを始めて、あなたの理想の生き方、働き方を目指しましょう。
執筆者名佐藤 玲子
編集企画CWパートナーシップ・フリサプ編集チーム