AI(Artificial Intelligence)とは、人工知能のことを言います。
AIによって世の中に多くのメリットがもたらされることが予想できますが、その反面で問題点も浮上してきています。適切にAIの問題点に対処しなければ、今後多くのトラブルが発生してしまうでしょう。
そこでこの記事では、AIの問題点や注意点、問題の解決策、導入事例をご紹介していきます。AIに関するトラブルを回避するため、AIを有効活用するために、ぜひご一読ください。
AIとは
人工知能であるAIは、人間のように学習・判断をする存在です。学習した内容を使って、特定のタスクを自主的に解決する能力をAIは持っています。
また従来のコンピューターでは不可能だった高度な演算が可能となり、情報通信業や製造業、金融業などさまざまな分野でAIが普及してきています。一方でAIは単純作業も得意で、人間の仕事を助ける存在として、多くの分野での応用が期待されています。
ただし、常に人間の監視や指導がないと思ったように動いてくれないケースも発生します。AIを適切に運用するためには、メリットだけでなく問題点・注意点も知っておく必要があるでしょう。
企業におけるAI導入のメリット
AIを企業に導入することにより、以下のようにさまざまなメリットが得られます。
- 大量のデータを処理できる
- 新たな事業を創出できる
- 作業を効率化できる
- 24時間365日稼働できる
- 人間のケガのリスクを減らせる
- 個人用にカスタマイズできる
- 言語の壁が消える
これらのメリットを、さらに詳しく解説していきます。
大量のデータを処理できる
AIは大量のデータを処理できます。例えば数百万件の顧客データを分析して、どのような製品が売れるのかを考えることもできるでしょう。
過去のデータから未来予測を行ったり、条件の変化に対応してタスクのパターンを変えたり、柔軟に作業を行います。
新たな事業を創出できる
AIを活用して、これまで不可能だったビジネスモデルを実行できます。新たな事業を創出することにより、競合他社よりも有利なビジネスが可能になるでしょう。
大量のデータを学習したAIを他社が真似するのは時間がかかるため、参入障壁を作ることもできます。ただし、大量のデータを学習させるには大規模なデータ収集が必要なため、小規模なショッピングサイトの購買データ分析をAIに行わせても、思ったような結果につながらないことも起こるでしょう。
作業を効率化できる
AIのサポートにより、人間の作業を効率化できます。人間が見落としがちな小さな不具合も発見できるため、製品の品質向上ができるでしょう。
また人間の仕事が減ると、人件費の節約にもつながります。労働力不足で困っている企業は多いため、AIの活用で経営状態が改善するかもしれません。
24時間365日稼働できる
AIは人間のように休憩が要らないため、24時間365日稼働できます。警備業のようなシステムの継続稼働が必要な分野では、特にAIが活躍してくれるでしょう。
また、ショッピングサイトへの問い合わせに24時間対応するAIチャットボットを使用して、顧客満足度を向上させることも可能です。
人間のケガのリスクを減らせる
例えば危険な作業が発生する工事現場では、人間の代わりにAIを搭載したロボットが働くことで人間のケガのリスクを減らせます。
自然災害後の救助活動や復旧作業でも、AI搭載ロボットが活躍します。人間とは違い、不眠不休の作業に疲労を感じることなく働き続けてくれるでしょう。
<h3>個人用にカスタマイズできる
AIは、個人の好みを学習し、個人用にカスタマイズされたサービスを提供してくれます。個人の好みに最適化されたAIを使うと仕事をスムーズに行えるようになるでしょう。
個人のスキル・知識レベルに合わせて学習計画を立てるなど、さまざまな利用方法が考えられます。
言語の壁が消える
AIの自動翻訳機能や音声認識技術を活用すれば、言語の壁は消えていくことになるでしょう。海外企業とのコミュニケーションが円滑になり、ビジネスの制約が減り、新たなビジネスチャンスが生まれます。
ビデオ会議でAIがリアルタイムで通訳することで商品の販路を海外へ拡大するなど、さまざまな活用方法が考えられます。
AI活用の問題点・注意点
AIの導入には多くのメリットがありますが、問題点・注意点についても知っておかなくてはなりません。以下のような問題点・注意点を事前に把握しておくと、適切な対策を検討しやすくなります。
- 倫理的な問題
- シンギュラリティ
- プライバシー問題
- 企業の情報漏洩リスク
- 失業問題
- 事故発生時の責任問題
- ブラックボックス問題
- AI人材不足の問題
- 導入・運用コストの発生
- 人間の思考力の低下
これらの問題点・注意点を、詳しく解説していきます。
倫理的な問題
AIには、人間のような倫理的判断が難しいと言われています。ある企業でAIに人事採用を任せたところ、社員が特定の人種や性別に偏ってしまったという事例が発生しています。
また命に関わる医療の現場でも、AIに判断を任せて問題ないのか疑問が浮上しています。AIは、プログラムの設計と取り入れたデータ内容によって挙動が変わるため、プログラムやデータについてもじっくり検討しなければなりません。
シンギュラリティ
AIが人間の知能を超えると言われているタイミングをシンギュラリティと言います。シンギュラリティが起こった場合、AIを人間が制御できなくなる恐れがあります。
シンギュラリティが起こるのは2040年前後と言われていますが、どのような未来がくるのか意見が分かれており、決定的なものではありません。
プライバシー問題
AIが個人情報を過剰に利用した場合は、プライバシーの侵害になります。AIが個人の好みを把握するには個人情報の収集が欠かせませんが、個人情報をどの程度利用するのか、AIのルール作りが重要です。
企業の情報漏洩リスク
企業の機密情報を学習したAIがハッキングされると、情報漏洩する恐れがあります。特にクラウドサーバーでAIを活用するケースも増えてきているため、情報漏洩のリスクが高まります。
セキュリティ対策も必要になるでしょう。セキュリティをすり抜けるために別のAIが使われる場合もあるため、現在よりさらに高度なセキュリティ対策を行わなくてはなりません。
失業問題
これまで人間が行っていた仕事をAIやロボットが行うようになると、職を失う人が出てきます。特に単純作業が多い仕事は、AIがすぐに学習して取って代わってしまいます。
データの入力やチェック、工場の流れ作業などをはじめ、高度な思考が必要な作業までをもAIやロボットが奪ってしまうかもしれません。
AIに仕事を取られないためには、AIが苦手な分野で新たなスキルを学ぶことが必要です。例えば顧客と対面して商談するのは、人間でなければできません。
事故発生時の責任問題
AIが行った作業により事故が発生した場合に誰が責任を取るのか、法律ではっきりとは決まっていません。人間では起こり得ない、予想外の事故が起こることが考えられます。
特にAIシステムが複雑化してくると、その挙動を予測するのは難しいです。本当に安全にAIを使い続けられるのか、慎重に見極める必要があるでしょう。
ブラックボックス問題
AIの判断がどのように行われているのか人間には分からない、というのを「ブラックボックス問題」と言います。万が一AIが原因でトラブルが起こった場合、誰が責任を取るのか、判断しにくい状況になる可能性があります。
そこでAIが判断を行った根拠を探る技術の開発も進められています。例えばAIが判断のために注目したポイントを特定できるようになると、AIの挙動を修正することが可能です。
AI人材不足の問題
AIの運用・開発には高度なスキルが必要で、人材獲得競争も激化しています。そのためAIエンジニア・AIプランナー・データサイエンティストなどのAI人材が不足し、適切にAIを活用できない事態になるかもしれません。
導入・運用コストの発生
AIを導入して運用するには、それなりのコストがかかります。AI人材の採用・育成が必要ですし、AIの精度を高めるには大量のデータを用意しなくてはなりません。
良い結果が出るようになるまで、ある程度の期間が必要なので、費用対効果について慎重に検討する必要があるでしょう。
人間の思考力の低下
生成AIに判断を任せる機会が増えるにつれ、人間の思考力が低下していく恐れがあります。AI依存の状態になり、万が一の事態に人間が対応できなくなる危険性があります。
ただし人類はこれまで一部の能力を失いながら、新たな能力を獲得してきました。例えばビジネスで電卓を使っている方は、暗算が苦手になることは想像できます。
世界がAIを活用する方向に進んでいる中、頑なにAIを使わないほうが高リスクという考え方もあります。慎重にAIを利用する方法を考えた方が、ビジネスにおいては生産的かもしれません。
AIの問題点の解決策
AIは便利な反面、まだまだ問題点も多いです。しかしAIを有効活用するには、問題点への解決策が必要です。
そこで以下では、解決策の例を挙げていきます。
セキュリティ対策を強化する
AIの情報漏洩対策としては、セキュリティの専門家に相談したり、リスク管理マニュアルを社内で作成したりして、セキュリティ対策を強化する方法があります。
AIを活用してセキュリティ人材を育てることもできるでしょう。例えば仮想の環境でサイバー攻撃を再現し、教育プログラムの受講者がリアルタイムで対処します。
社内で責任の所在を明確にしておく
AIの判断によってトラブルが起こった場合責任の所在はどこにあるのか、それについて明記された法律は2024年時点ではありません。トラブル時の責任の所在や対応について社内ルール作りを行う必要があるでしょう。
また、倫理的な判断は、人間が行うようにすると良いでしょう。AIの苦手分野を人間が補うことで、AIをより良く活用できるようになります。
ビジネスにおけるAIの活用事例
ビジネスの現場では、AIのさまざまな活用方法が考えられます。実際にどのように活用されているのか、具体的な事例をご紹介していきます。
工場での不良品検知
AIの画像認識技術を応用し、工場での不良品検知にAIを導入した事例があります。
これまでの従業員の目視で不良品を見つける方法は、ミスが起きがちでした。特に新人の従業員はミスが多い傾向にあり、熟練するまで時間がかかります。熟練の従業員が休職・退職してしまうと、仕事が上手く回らなくなってしまうでしょう。
そのような場合にAIを導入すると、不良品を瞬時に識別できます。事前にチェック対象の画像データを学ばせておけば、工場の人員を減らして人件費の節約も可能です。
単純作業はAIに任せて、従業員はよりクリエイティブな仕事に専念できるでしょう。
商業施設内の混雑状況の把握
商業施設にAIカメラを導入し、混雑状況を分析・通知してもらう方法もあります。混雑しているレジの人員を増やすなどして、混雑をスピーディに解消できます。
また、防犯カメラの映像を分析し、危険行動を取っている人物の検知も可能です。通報まで行ってくれるので、施設の安全が保たれます。
小売業や飲食業での売上・需要予測
スーパーやコンビニなど小売業では、売上や需要予測にAIが使われ始めています。
過去のデータから将来の売上を予測したり、市場データの分析結果から新規の商品・サービスの需要を予測したりできます。
また、飲食店では客数を予測して必要以上の発注を防ぐことができるので、食品ロスも削減できます。利益を増やすことにもつながるため、店舗経営が安定しやすくなるでしょう。
医療での診断精度の向上
AIの画像認識技術を使い、医療現場の診断精度を向上させることも可能です。レントゲンやCTスキャンなどでは画像を使うので、AIの得意分野と言えるでしょう。
人間の目では確認が難しい、わずかな病変がある箇所でもAIは正確に特定できるので、医師の診断業務の負担を減らせます。
作物や土壌の把握
農業分野でもAIが活用されます。AIを活用した農業を「スマート農業」と呼び、広大な農地の適切な管理が可能となりました。
たとえば作物の生育状況をリアルタイムで監視したり、土壌の状態をチェックしたりできます。適切なタイミングや量で水・肥料を与えられるため、作物の生育が良くなり、病害虫の発生も防ぐことができます。
また作業工程をデータ化することにより、後継者への技術継承がしやすくなります。さらに、これまでより利益が出やすくなると、農業に興味を持つ人材が増えるかもしれません。
教育内容のカスタマイズ
教育分野にもAIが導入されはじめています。児童・生徒一人ひとりの学習データを分析し、オーダーメイドのカリキュラムを作成しています。
従来の「みんな同じ内容を勉強する」という授業スタイルではなく、児童・生徒のレベルに合ったカリキュラムにできるので、各自がより効率的に勉強ができるでしょう。
児童・生徒のモチベーションも高まりますし、人手不足で労働時間が増えがちな教師の負担も減らせます。
送迎ルートの作成
介護の現場では、デイサービスへの送り迎えが発生します。スタッフの送り迎えの負担を減らすために、AIが導入された事例があります。
送迎業務は1日の仕事の約3割を占めるため、大きな負担となっていました。そこで目を付けたのがAIの活用です。利用者同士の相性を考慮したり、各利用者が乗り降りするタイミングを計算したりして、最小限の労力で送迎できるようAIが計画を立てます。
スタッフの負担が減ると人材が集まりやすくなり、人手不足を解消できるメリットも得られるでしょう。
AIの問題点は人間の慎重な活用で解決できる
人工知能であるAIを活用すると、企業に多くのメリットがもたらされます。AIは、大量のデータ処理が可能ですし、24時間365日稼働できます。
ただし、倫理的な問題、情報漏洩リスクの問題など注意点も多いため、社内で責任の所在を明確にしたうえでセキュリティ対策を強化するなど、ひとつひとつ適切に対処していくことが求められるでしょう。
現在のビジネスシーンでは、すでに多くのAIが稼働しています。工場での不良品検知や売上予測など、ビジネスに欠かせない仕事を担いつつあります。
この記事を参考に、問題点を理解した上でのAI導入検討をおすすめします。さまざまな企業が提供するAIツールを賢く活用していきましょう。
執筆者名Ruben
編集企画CWパートナーシップ・フリサプ編集チーム