本記事ではこれから法人携帯の導入を検討されている方に向けて、法人携帯とは何であるのか、導入する際のメリットや注意点について解説します。
現代社会において、ビジネスを円滑に進めるために欠かすことのできないツールの一つが携帯電話です。顧客への連絡手段だけではなく、メールの確認、スケジュールの管理など幅広い用途で利用できます。
業務の際に使用する携帯電話についてですが、個人で契約している携帯電話をそのまま利用してもらっている会社もあれば、法人携帯を導入し従業員に貸与を行っている会社もあります。
法人携帯にはビジネスを円滑に進める多くのメリットがあるため、本記事を参考にぜひ導入をご検討ください。
法人携帯とはなにか?
はじめに、法人携帯とは何かについて解説します。
法人携帯とは簡単に言うと、個人名義ではなく法人名義で契約した携帯電話のことを指します。「法人携帯」と名前のつく端末などが売られているわけではありませんが、法人向けの通信プランが用意されていることがあり、活用できます。
法人携帯と対になる言葉として、個人携帯があります。個人携帯とはその名の通り、個人が主体となり契約をした端末で、プライベートなどを含めて日常的に使用している携帯電話です。
法人携帯 | 個人携帯 | |
契約の主体 | 法人(企業) | 個人 |
特徴 | ・使い方に応じた、法人専用のプランが用意されている。 ・従業員同士の通話が無料などの、法人限定の特典がある | ・日常使っている携帯電話 ・端末を販売する各社の規定に則った上で、基本的には誰でも申し込みが可能 |
法人携帯には企業の規模や利用頻度に応じた料金プラン、紛失時の情報漏洩対策など、個人携帯にはない様々なサービスが用意されています。
この後の章で、法人携帯を導入するメリットや注意点について詳しく解説します。
法人携帯を導入するメリット
ここからは、より具体的に法人携帯を導入するメリットについて解説します。
個人情報などを守ることができる
法人携帯には企業専用のセキュリティ対策を導入することができるため、顧客や従業員の個人的な連絡先や重要なメールなどを保護することが可能です。
携帯電話は外出先などに持ち歩くために設計されているため、どんなに注意をしていても紛失などのリスクが運用にはつきまといます。
万が一紛失をしてしまった場合でも、しっかりとしたセキュリティ対策を事前にしておくことで情報漏洩のリスクを低減できます。
具体的には、MDM(モバイルデバイス管理)を利用し、起動時のパスワード設定を強制する、アプリ使用時にパスワードを求める、紛失時に遠隔でロックができるなどのサービスが提供されます。
個人携帯電話では、セキュリティ対策は従業員に一任されてしまうため、セキュリティ意識の高い企業ほど法人携帯の導入に積極的な姿勢です。
法人携帯を導入すると、顧客や従業員同士のやり取りの際に個人の携帯電話の番号を伝える必要がなくなり、従業員一人ひとりのプライバシーを守ることができます。
また個人情報の保護やプライバシーの管理を徹底している企業との取引であれば、信頼関係の構築にも繋がります。
個人の携帯電話番号を伝えるといった心理的負担もなくなるため、従業員の方が安心して業務に取り組むことができるようになるのもメリットの一つです。
法人携帯のプランを提供している通信会社の中には、会社の固定電話の番号で発着信を行えるサービスを提供している場合があります。
固定電話番号での発着信を利用することで、外出先でも円滑な顧客とのコミュニケーションが実現します。また折り返し電話などが必要なくなり、業務効率の改善にも効果的です。
利用料金が安くなる
法人携帯には端末や充電器などをリースやレンタルするサービスを提供している会社もあります。
従業員数の多い法人であれば、リースやレンタルを活用することで、初期投資を抑えた法人携帯の導入が可能です。
定期的に端末の交換もできるため、最新のデバイスを従業員に提供し、業務効率の向上やセキュリティの担保にも貢献します。
また、法人携帯では、法人専用の料金プランが提供されていることがほとんどです。通話やデータ通信量をビジネスに合わせて最適化されているものが多く、個人携帯のプランを利用するよりも利用料金が安くなる場合があります。
通信会社の中には、従業員同士の通話は無料といった嬉しいプランもあります。
法人携帯を導入する際は、通話メインで使いたいのか、メールなどのデータ通信で使いたいのか、利用頻度はどのくらいなのかを考えて契約することが重要です。
導入に際してサポートを行っている通信会社もあるため、初めて導入する場合は営業担当に相談することをおすすめします。
管理が容易になり業務の効率化が図れる
個人携帯を業務に使用した場合、後日従業員ごとに通信費などを還元する必要があり、その利用回数や頻度に応じて適正な額を毎月支払うとなると、経費計上が非常に煩雑になります。
法人携帯を導入すれば、通信費や端末代も一括で経費計上が可能です。従業員ごとの細かい精算処理が不要となり、毎月の支払いも一定額にまとめることができます。
税務署などから問い合わせがあった場合でも、法人携帯の使用記録や経費の詳細を明確に説明できるため、企業としての透明性や信用が向上します。
また、携帯電話などのデジタルデバイスを会社で導入する場合、故障やトラブル発生時のサポート体制を社内で整備する必要がありますが、法人携帯を導入することにより管理も容易です。
業務アプリなどを導入する場合でも、限られた端末のみで動作環境の確認を行えばよいため、システム部門などの負担軽減にも有益です。
法人携帯は設定を行うことで社内ネットワークへのアクセス、業務アプリのインストールといった便利な機能を活用することもできます。
勤怠管理アプリ、交通費精算アプリ、WEB会議アプリなどを活用すれば、外出先でも業務ができるためオフィスに戻って事務作業をするといった手間もなくなります。
外出や出張だけでなく、リモートワークなど働き方が多様化する現代においては企業の効率的な業務運営にも貢献します。
また利便性が高まることで従業員満足度を上げることも可能です。
従業員間のコミュニケーションが促進される
法人携帯であれば使用するアプリやコミュニケーションツールなどは会社側が自由に設定できます。
同じアプリを使用することにより、従業員同士のコミュニケーションを促進することが可能です。通信費も会社が負担するため、従業員がコストを気にする必要もなくなります。
また、カレンダーアプリなどと連携を行えば、出退勤の共有も可能なため、不在時のフォローなども容易となり業務効率が向上します。
さらに個人携帯に対して連絡をするには心理的ハードルがあるという方も、法人携帯であれば気兼ねなく連絡することができるのもメリットの一つです。
ライフワークバランスが担保できる
業務専用の法人携帯を従業員へ貸与することは、ライフワークバランスの担保にも貢献します。
携帯電話は日常頻繁に使用するツールであるため、個人携帯を併用すると、休み中でも取引先からの着信やメールが目に入るといった事象が発生します。休みの日に着信や通知が目に入ることで、リラックスできないといった問題が発生するケースもあります。
しかし、利用する携帯そのものを、法人と個人に分けることで解決できます。法人携帯の導入は、従業員が安心して働ける環境を提供する役割も果たします。
法人携帯を導入する際の注意点について
様々なメリットがある法人携帯ですが、導入する際には注意しておきたいポイントがいくつかあります。導入後の失敗を防ぐためにも、注意すべき点を解説します。
従業員の勤怠管理に注意する
責任感の強い従業員の場合、休日でも法人携帯の着信やメールをチェックしてしまうことがあり得ます。
しかし、こうした行為は勤怠管理上も問題となる可能性があります。このような状態が続くと、従業員が無意識に長時間労働を行い、過労の原因となることも懸念されます。
企業側としては、ライフワークバランスの確保や従業員の健康を守るためにも、法人携帯の利用に関するルールを明確に取り決めることが必要不可欠です。
ルールを決めることは従業員が業務とプライベートをしっかりと区別できるだけでなく、適正な勤怠管理が促進され、従業員の満足度や企業の労務管理の信頼性も向上します。
利用ルールを明確化する
法人携帯を導入する際には、従業員が適切に使用できるように明確な利用ルールを設定することが重要です。具体的には、業務外での使用範囲やプライベート利用の可否を具体的に決める必要があります。
たとえば、法人携帯を完全に業務用として制限する場合、従業員がプライベートな通話やデータ通信を行わないよう徹底する必要があります。
一方で、一定の範囲でプライベート利用を許可する場合でも、利用時間やデータ量の上限を定めて、無駄な通信費が発生しないような管理が求められます。
また、従業員に対しては法人携帯の利用ルールを明文化し、使用の際に守るべきガイドラインを周知徹底することが大切です。これにより、通信費の適切なコントロールが可能となり、企業全体のコスト管理が円滑に進むだけでなく、トラブルや不正利用のリスクも軽減されます。
法人携帯と個人携帯の2台持ちで荷物がかさばる
ここまでソフトや運用面での話が中心でしたが、ハードの面でも注意点があることを忘れてはいけません。法人携帯を導入すると従業員は、個人携帯との2台持ちが必要とされます。
スマートフォンは小型化・軽量化が進んではいますが、2台持ちとなると重量や場所の確保に負担を感じるでしょう。
例えば2024年にAppleから発売されたスマートフォン iPhone 16の場合は、1台あたりの重量が170グラムです。2台を保有する場合340グラムとなり、缶ビール約1本分の重さに匹敵します。
また充電器や予備のバッテリーなどを持ち運ぶことを考えると、更に荷物の量が増加します。
法人携帯を導入する際には、必要な機能だけではなく重さの部分にも着目して利用者目線で機種選びをすることが大切です。
法人携帯導入のおすすめ事例
法人携帯のメリットや注意点を理解したところで、法人携帯の導入がおすすめのシーンについてご紹介します。自身が経営する会社などが該当しているようであれば、ぜひ法人携帯の導入をご検討ください。
営業職
営業担当者にとって、顧客とのコミュニケーションはビジネスの成功に欠かせない要素です。
法人携帯を利用することで、外出中や移動中でもオフィスに戻ることなく、顧客からの電話やメッセージにリアルタイムで対応することが可能となります。これにより、迅速な返答ができ、顧客満足度が向上します。
さらに、簡単な質問や問い合わせであればその場で即座に対応できるため、後でまとめて処理する必要がなく、業務の効率化にも大きく貢献します。
例えば、見積もりの確認や契約内容の調整などを急遽求められた場合でも、迅速にキャッチアップや連携をすることができ、商談のスピードアップや機会損失の防止につながります。
建設業
建設業の現場では一人で仕事をするといったことはほとんど無く、大工・建材メーカー・測量士などと多くの人と関わりを持ちながら業務を進めます。
現場監督や施工管理者といった立場の人であれば、業務を進めるにあたって多くの人と連絡を取り合うため、法人携帯が大いに活躍します。
防水や防塵に対応した業務用の機種を選択すれば、利便性の向上も図ることが可能です。
物流・運輸業
ドライバーや配送員は、配送先との連絡や配送状況の報告に法人携帯を使用することで、トラブルの早期解決や配送のスムーズな運行が期待できます。
またGPSやアプリを活用し、ドライバーの現在地の把握、目的地までの所要時間を本社のスタッフが管理するといった使い方も可能です。
連絡だけでなくドライバーなどの管理ツールとして活用することで、顧客満足度の向上、サービス品質のアップにも繋がります。
屋外や外回りなど現場の作業が発生する仕事
屋外での作業には、法人携帯は大変便利です。以下に活用例を挙げます。
イベント運営
コンサートやお祭りなど広い会場を舞台に仕事を行うイベント運営の業務でも法人携帯が活躍します。
トランシーバーなどを使うケースもありますが、携帯電話を活用することで音声だけでなく、画像やテキストでのコミュニケーションも実現します。
またイベントの連絡先として使用する場合も、固定電話を用意する必要がなくなるため、コスト面でも大きなメリットです。
フィールドサービスエンジニア
フィールドサービスエンジニアは、製品の設置やメンテナンス、修理を顧客のオフィスや工場などの現場で直接行うプロフェッショナルです。
そのため、顧客のニーズに迅速に対応し、現場で発生するトラブルにも即座に対処することが求められます。
このような現場環境において法人携帯を利用することで、現場から直接本社や技術サポートチームとの円滑なコミュニケーションが可能となり、問題解決のスピードが向上します。
また、フィールドサービスエンジニアの業務では、現場の状況確認や技術的な相談のため、長時間の通話が必要となることが多くあります。
法人携帯を導入することで、長時間の通話にかかるコストを企業側が管理でき、従業員が通話料金を気にすることなく業務に集中できる環境が整います。通話時間を気にするという心理的負担も軽減され、効率的に業務を進めることが可能となります。
まとめ:法人携帯の導入は多くのメリットあり
法人携帯の導入は、顧客の個人情報の保護、労務管理、経費管理など多くのメリットがあります。その一方でルールを正しく決めなければ、トラブルの火種にもなります。
これから法人携帯の導入を検討されている企業の方は、本記事で紹介したポイントを参考にルールの策定などを進めていきましょう。
また導入に関して不安がある方は、法人携帯を提供している通信会社の担当者に相談するのもおすすめです。各企業に最適なプランや導入方法のアドバイスを受けることができるでしょう。
執筆者名Tak_1989
編集企画CWパートナーシップ・フリサプ編集チーム