この記事では、AI導入のメリットについて解説していきます。
AIをビジネスに導入する企業が増えてきています。AIを活用することで生産性が向上し、労働力不足が解消されるなどさまざまなメリットが得られるでしょう。
ただし、AIの導入には問題点もあり、なんらかの対策を行うことが求められます。
AI導入の問題点と解決策、活用事例についてもご紹介していますので、ぜひご一読ください。
AIとは
AIは「Artificial Intelligence」の略で、人工知能という意味です。決まった定義はありませんが、一般的には人間のような知能を持つコンピュータープログラムのことを指します。
従来の機械やコンピューターとは異なり、プログラム通りに動くだけでなく、自分で学び考えられる存在です。コンピューター自らが大量のデータを活用して学習を行う「ディープラーニング」は、AI技術の機械学習の一分野として有名です。
AIには2種類ある
AIには「特化型AI」と「汎用型AI」の2種類があると言われています。それぞれの特徴を以下で簡単にご紹介します。
特化型AI
特定の分野に対応するAIです。たとえば、画像認識や翻訳に特化したAIが挙げられます。
特化型AIは、日常生活やビジネスで実用できるレベルに到達しており、どんどん活用されるシーンが増えてきています。
汎用型AI
汎用型AIは、人間と同じように知的に行動できる存在ですが、2024年時点ではまだ実現していません。SF映画のように、日常生活やビジネスなど幅広い領域に対応するAIロボットが実現する日も、そう遠くないかもしれません。
AI導入9つのメリット
AIは、私たちの日常生活や仕事環境を大きく変える力を持っています。労働力不足の解消やデータ分析の自動化、多方面での活用が進んでいます。
ここでは、AIを導入することで得られる具体的なメリットを9つご紹介します。
- 労働力不足の解消
- 生産性の向上
- コスト削減
- 安全性の向上
- ヒューマンエラーの防止
- 高品質なサービスの実現
- 人的リソースの効果的な活用
- データ分析・予測の自動化
- 円滑なコミュニケーション
①労働力不足の解消
AIを導入することにより作業の効率化ができるので、労働力不足を解消できます。現時点では、すべての仕事をAIに任せられるわけではありませんが、特定の業務をAIに任せるだけでも多くのメリットが得られるでしょう。
とくにケガをする恐れがあったり、精神的苦痛があったりする作業を優先的にAIに任せると、より良い社会へと近づいていくでしょう。
②生産性の向上
AIに仕事を任せることで、生産性の向上も見込めます。人間だと仕事を覚えるまでにある程度の時間がかかりますが、AIだと短時間で高品質な業務を行えるようになるでしょう。
また人間のように体調や気持ちに左右されることなく、安定して作業を行える点もAIのメリットです。工場のライン作業など単純作業を伴う仕事も、AIならほとんどミスすることなく行ってくれます。
③コスト削減
AIの導入によりコスト削減も可能です。AIのメンテナンスを行う人員は必要ですが、これまで人間が行っていた多くの仕事をAIに任せられます。
たとえば、AIチャットボットを利用すると、人間からの質問に自動で答えてくれるので、顧客対応のコストを減らせるでしょう。顧客ごとのオーダーメイドな対応も可能なので、顧客満足度の向上も期待できます。
④安全性の向上
AIと機械を活用することで、職場の安全性が大きく向上します。たとえば重量物の運搬を産業用ロボットに任せたり、自動運転車両を導入して長距離配送を行うことで、人間が事故に巻き込まれるリスクを大幅に軽減できます。
また、AIによるデータ分析を活用することで、高精度な事故予測や異常検知が可能になります。さらに設備の老朽化や異常を事前に察知することで、適切なタイミングでメンテナンスを行い、安全性をさらに向上させられるでしょう。
⑤ヒューマンエラーの防止
単純作業や長時間労働が原因で発生しやすいヒューマンエラーも、AIの導入で大幅に削減できます。一度設定されたプログラムに基づき、AIは作業を正確に実行するため、人間のミスが起こる機会を減らせます。
とくに、工場や医療現場では、1つのミスが重大な事故やトラブルにつながる場合も多くありますが、AIによって管理・監視をすることで、リスクを大幅に低減できます。
⑥高品質なサービスの実現
AIは、24時間体制で稼働できるので、サービスの利便性を大きく高めます。自動運転トラックによる物流サービスがその一例です。このようなサービスにより、顧客はさらに便利にサービスを利用できるでしょう。
また医療分野でも、AIの活用が進んでいます。たとえばオンラインで医師に相談できる遠隔医療により、利便性の高い医療環境が提供できます。
⑦人的リソースの効果的な活用
AIを導入することで業務の一部を自動化し、貴重な人的リソースを重点業務に集中させることができます。単純作業やルーティン業務はAIに任せ、人間はクリエイティブな仕事や戦略的な判断が求められる業務に専念できるようになるでしょう。
⑧データ分析・予測の自動化
AIは大量のビッグデータを迅速に分析し、予測を行えます。どのようにすれば顧客満足度が向上するか、というような答えを出すのもAIは得意です。
膨大なデータを人間が分析するには多くの時間を要しますが、AIなら短時間で可能です。効率的にデータ分析・予想を行えるでしょう。
⑨円滑なコミュニケーション
人間同士の円滑なコミュニケーションのために、AIを活用することもできます。AIを活用することで、言語の制約を超えた円滑なコミュニケーションが可能になります。
リモート会議やリモート接客では、AIが背景処理や音声認識機能を担い、自宅やカフェなど多様な場所での利用をサポートします。
リモート勤務の社員や産休中のスタッフが、AIアバターを介して顧客対応を行う取り組みも始まっています。リアルな人間との対面よりも、AIアバターのほうがリラックスして相談できると感じる人も多く、新しいコミュニケーション手段として注目されています。
【業界別】AIの活用例
AIはさまざまな業界で活用され、業務効率化や課題解決に貢献しています。ここではAI活用の具体的な事例をご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【製造業】におけるAI活用
製造現場では、AIが生産性向上や品質管理の面で大きな役割を果たします。
不良品検査の自動化
製造業では、製品の傷や異物混入などをチェックする不良検査が欠かせません。しかし、従来の目視検査は熟練した技術が必要であり、ミスが発生しやすいのが課題でした。
そこでAIを使った画像認識技術を導入することで、これらの検査業務を自動化できるようになりました。AIは人間の技術を学習し、検査精度を維持しながら効率化を実現します。
AIとロボットアームと連携させることで、不良品を自動で取り除ける仕組みを構築することも可能です。
労働環境の改善
AIを導入することで、人間に依存していた労働環境が改善されます。負担が大きい検品作業をAIが担うことにより、作業者の肉体的な負担を軽減します。
AIは24時間稼働できるため、生産ラインの稼働率を高めることも可能です。
【物流業界】でのAIの役割
労働力不足や需要の変動といった課題をAIが解決する事例が、物流業界で増えています。
配送計画の最適化
物流業では、AIを使った需要予測や配送計画の最適化が進んでいます。配送ルートや積載率をAIが分析することで効率的な運用が可能となり、再配達の回避や燃料コストの削減につながっています。
倉庫作業の自動化
AIロボットでピッキング作業を自動化できると、倉庫作業の効率を大幅に向上させられます。労働力不足を解消できるだけでなく、在庫管理の精度も高くなり、余剰在庫の削減にもつながるでしょう。
【小売・卸売業】におけるAIの活用
小売・卸売業では、消費者行動のデータを基にAIによる売上予測や商品管理が可能です。
需要予測と食品ロスの削減
AIを活用して商品がどの程度売れるかを予測し、適切に在庫管理できます。たとえば食料品店の利用状況や販売データをAIが分析することで、食品ロスを抑える取り組みが進んでいます。
効率的な価格設定
AIを利用した価格設定も注目されています。在庫状況や仕入れ価格を考慮し、商品価格をリアルタイムで調整する仕組みが導入されています。
需要に応じた柔軟な価格設定が可能になり、収益性の向上が期待できます。
【人材・HR業界】でのAI活用
人材業界・HR(ヒューマンリソース)業界でも、AIの導入が進んでいます。
問い合わせ対応の効率化
たとえば求人情報サイトでは、ユーザーの質問に即座に対応するチャットボットが整備され、利便性が向上しました。従来は電話・メールでの対応に多くの時間が費やされていましたが、AI導入により問い合わせ対応にかかる時間が大幅に短縮されました。
チャットボットなら営業時間外でも利用者の疑問に答えられるため、顧客満足度も向上します。
適材適所の人材配置
求職者のスキルや適性を分析し、最適な求人とマッチングするシステムの開発にもAIが利用されています。これにより採用担当者の負担が軽減されるだけでなく、求職者にとっても効率的な就職活動につながります。
【金融業界】におけるAI活用
金融業界では、投資へのAIの活用が進んでいます。
株価予測による投資戦略の最適化
AIが過去の株価データを基にパターンを分析し、将来の値動きを予測します。この技術により、リスク管理の精度が向上し、投資戦略の最適化が可能です。
また、企業の決算データや経済指標を統合的に解析し、投資に有望な銘柄を選び出すAIサービスもあります。AIのサポートがあれば、投資初心者が効率的に資産を運用できるようになるでしょう。
AI導入の問題点・注意点
AI技術が進歩してきているとは言え、導入には課題やリスクも伴います。具体的には、AI導入には以下のような問題点・注意点があります。
- サイバー攻撃による情報漏洩のリスク
- 倫理的な問題
- 長期的なコスト管理の必要性
- シンギュラリティ
- 不要な情報による品質低下
- 人材育成の必要性
- プライバシー保護の徹底
- トラブル時の責任の所在
サイバー攻撃による情報漏洩のリスク
AIは大量のデータを扱うため、個人情報や機密データがサイバー攻撃の標的になる可能性があります。悪意のある攻撃者がAIシステムを狙った場合、大量のデータが漏洩し、企業や個人に深刻な影響を与えることが考えられるでしょう。
そのため、AIを導入する際はセキュリティ対策を徹底し、システムの安全性を高める必要があります。
倫理的な問題
AIは合理的な判断が得意ですが、倫理的な視点を持つことはできません。とくに医療や福祉などの分野では、判断を誤ると取り返しのつかない結果を招くことがあります。
そのため、AIの判断に対して人間が最終的な確認を行う仕組みを整えることが求められます。
長期的なコスト管理の必要性
短期的な計画でAIを導入すると、維持や修正に多くのコストがかかる場合があります。よって初期段階で全体の運用設計を行い、長期的なコストも見越して計画を立てることが大切です。
シンギュラリティ
人間の知能を超えると言われる「シンギュラリティ」により、AIの制御が困難になる可能性が指摘されています。この状況に対処するには、AIが独自に判断し過ぎないよう倫理的・技術的な規制を整えることが重要です。
シンギュラリティが到達する時期には諸説あり、2040年頃が予測される一方で、懐疑的な意見もあります。それでも、仮にシンギュラリティが起きた場合に備えてルールの整備を進めるべきでしょう。
不要な情報による品質低下
AIの精度は、入力データの質に大きく左右されます。たとえば、温度・圧力・速度などを収集するIoTセンサーから得られるデータは、異常値が含まれている場合が多く、そのまま活用するとAIの正確性を損なう可能性があります。
データを利用する前に不要な情報を取り除いたり、精度を調整したりすることが必要です。整理されたデータを基にAIを活用すれば、より信頼性の高い成果を得られるでしょう。
人材育成の必要性
AIを活用するには、専門知識を持つ人材が欠かせません。AIのアルゴリズムを理解し、管理できるエンジニアを採用したり、既存の社員を育成したりすることが必要です。
自社で必要なスキルや役割を明確に定義し、計画的に人材育成を行うことで、AI活用を円滑に進められます。適切な教育プログラムを導入すれば、AI導入後の運用もスムーズに行えるでしょう。
プライバシー保護の徹底
AIが個人情報を扱う場合、プライバシー侵害のリスクが生じます。たとえば、購入履歴や行動データを分析するAIが、ユーザーの意図しない形で情報を収集し過ぎるとトラブルに発展する可能性があります。
そこで個人情報の収集目的を明確にし、利用範囲を限定する規約を整えることが大切です。またユーザーに対して情報管理の透明性を示すことが、信頼構築につながります。
トラブル時の責任の所在
AI導入後にトラブルが発生した場合、責任の所在が不明確になりやすいです。たとえば自動運転車の事故や個人情報漏洩が起きた場合、開発側と運用側のどちらが責任を負うべきか議論が分かれることがあります。
そのため、契約の段階で責任の分担や対応策を明確にしておくことが重要です。これなら、トラブルが発生した際も迅速かつ適切に対応できます。
AIの導入で次世代の競争力を手に入れよう
AIの導入により業務効率化・生産性向上・コスト削減など、数多くのメリットが得られます。労働力不足の解消や労働環境の安全性向上も可能で、データ分析の高速化にも役立ちます。
一方で、情報漏洩リスクや導入コストの問題、倫理的な課題なども存在するので、状況に応じて適切な対応が求められます。
とはいえAIは、日常業務の負担軽減と業務の高速化を同時に実現します。これにより、人的リソースをクリエイティブな業務に集中させ、企業の競争力を高められるでしょう。
また、安全性の向上により、従業員が安心して働ける環境が整いやすくなるでしょう。たとえば、製造業では不良品検査の自動化、物流業では配送計画の最適化というように、多くの実例で課題解決が達成されています。
ぜひAIを活用して業務を効率化し、次世代の競争力を手に入れましょう。導入に向け、まずは課題の洗い出しから始めてみてください。
執筆者名Ruben
編集企画CWパートナーシップ・フリサプ編集チーム