インターネットの普及やグローバル化に伴い、個人事業主が海外の顧客とビジネスを行う機会が増えています。海外の顧客とやり取りする中で、自分の立場や役職を英語でどう表現すればいいのか迷った経験はありませんか。
たとえば、個人事業主を英語でどう表現するか、名刺にどのような肩書を記載するか、屋号の扱い方など、さまざまな疑問が浮かぶことと思います。この記事では、個人事業主の意味や英語表現、読み方、名刺に適した肩書や屋号の使い方を解説します。
加えて、ビジネスで活用できる英会話や入国カードの記入方法、略称など、個人事業主として活動する上で必要な関連用語の英語表記も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
個人事業主とは?フリーランスや自営業との違い
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む人を意味します。法人と個人事業主の間には、起業の手続きや課税方式、事業規模といった面でさまざまな違いがあります。個人事業主の具体例としては、個人経営カフェのオーナー、家族経営の農家、個人で活動する英会話オンライン講師などが挙げられるでしょう。
個人事業主と似た形態として、フリーランスや自営業があります。フリーランスは特定の会社や団体に所属せず、個別の案件ごとに契約を結び、個人で仕事を請け負う働き方です。
フリーランスが税務署に開業届を提出すると、法的には個人事業主として扱われることになるため、フリーランスは個人事業主の一形態と言えるでしょう。
一方で、自営業はさらに広い意味を持ちます。自営業は法人化した小規模事業の経営者も含む概念です。個人事業主やフリーランスも自営業に含まれますが、法人の経営者を自営業者として扱う場合があります。
個人事業主の英語表現 読み方と使い方
個人事業主の正式かつ法的な英語表現は「a sole proprietor」です。soleは「単独、単一」、proprietorは「経営者」を意味し、直訳すると「単独経営者」となります。読み方は「ソール プロプライエター」と発音します。
Sole proprietorを用いた例文としては、次のようなものがあります。
"I’m a sole proprietor specializing in web design."
私はWebデザインを専門とする個人事業主です。
"I’m a sole proprietor running a small bakery."
私は個人事業主として小さなパン屋を経営しています。
"As a freelance software developer, I register as a sole proprietor for tax purposes."
私はフリーランスのソフトウェア開発者であり、税務上は個人事業主です。
ただし、Sole proprietorは、公文書や税務の場面で多く使用される言葉です。自己紹介や日常会話では、よりカジュアルな表現として「self-employed」が使われます。また、文脈によっては、個人事業主を指す「small business owner」や「independent -contractor」などが使われる場合があります。
フリーランス・自営業の英語表現
個人事業主と類似する意味を持つフリーランスや自営業に関する英語表現の違いについて、具体的な例文を交えて詳しく解説します。
フリーランスの場合
フリーランスの英語表記は「freelance」です。Freelanceは仕事の形態を表す言葉であり、フリーランスで働く人は「freelancer」と呼ばれます。
中世では、特定の国や君主に仕えない「傭兵」を意味するものでしたが、現在では「自由契約で働く人」を示す言葉として広く使われています。
Freelanceを用いた例文には、次のようなものがあります。
"I work freelance as an online English tutor."
=私はオンライン英語講師としてフリーランスで働いています。
→オンライン英語講師として複数の生徒と個別に契約を結び、柔軟に働いている。
"Many freelance designers register as sole proprietors."
=フリーランスのデザイナーの多くは個人事業主として働いています。
→フリーランスで働くデザイナーの多くが個人事業主として税務署に届出をし、法的に事業として運営している。
自営業の場合
自営業を意味する英語表現としては、self-employedがよく使われます。selfは「自分で」、employedは「雇われた」という意味で、直訳すると「自分に雇われている」となります。この表現は、雇用主がいない独立した働き方を指します。
自営業の具体的な表現には、事業の規模や働き方によってさまざまなバリエーションがあります。たとえば、small business ownerは小規模事業の経営者を意味し、independent contractorは契約単位で仕事を請け負う場合に用いられます。
自営業の英語表現を用いた例文には、次のようなものがあります。
"I am a self-employed web developer."
=私は自営業のweb開発者です。
→企業に雇われることなく、個人でweb開発の仕事をしている。
"She runs a small business as a graphic designer."
=彼女はグラフィックデザイナーとして、小規模な事業を運営しています。
→規模は小さいが、独立して事業を立ち上げ、グラフィックデザインの仕事をしている。
"He works as an independent contractor for various companies."
=彼は複数の企業と契約し、独立した契約者として働いています。
→複数の企業と契約を結び、プロジェクト単位で業務を行っている。
個人事業主を英語で正しく使うためのポイント
英語で個人事業主を表現する際には、文脈に応じた言葉選びが重要です。日常会話、公式書類、ビジネスメールなど、状況に応じて使い分けることでより適切な印象を与えることができます。
自分の事業形態に即した表現を選ぶ
具体的な肩書や業種を示すことで、自分の専門性を強調することができます。
例:Freelance photographer、self-employed consultantなど
曖昧な表現を避ける
海外では「CEO」や「President」を使うと、法人の代表者と誤解される可能性があります。個人事業主としての立場を明確にするためには、「Owner」や「Founder(創業者)」 という言葉を使いましょう。さらに、法的な立場を強調したい場合は、proprietorやself-employedを使うと効果的です。
必要に応じて補足説明を加える
名刺やプロフィールに具体的な業務内容やスキルを加えることで、相手に自分の専門性や提供するサービスを明確に伝えることができます。
例:Freelance web developer, specializing in responsive websites for small businesses
→フリーランスのWeb開発者で、とくに小規模企業向けのレスポンシブWebサイトを専門にしている。
例:Self-employed graphic designer, creating custom branding for local startups
→自営業のグラフィックデザイナーで、地元のスタートアップ企業向けにオリジナルのブランドデザインを提供している
個人事業主の英語の略称
個人事業主の英語表現には一般的な略称はありません。法的表現であるSole proprietorを略す習慣はなく、self-employedが場合によって「SE」と略される場合があります。
SEは文脈によって個人事業主を指しますが、日本のIT業界では「システムエンジニア」を意味する場合がほとんどです。そのため、正式な書類や公式な場面では略称の使用を避けることをおすすめします。
名刺に使える個人事業主の英語肩書例
個人事業主が英語表記の名刺を作成する際は、Sole proprietorやself-employedという表現だけではなく、自分の業務内容を的確に表現できる言葉を選びましょう。
たとえば、クリエイティブ系の職業では「Designer」「Photographer」、コンサルティング業務の場合は「Consultant」が適しています。また、事業規模や業務内容に応じて「Owner」や「Founder」といった肩書を付け加えるのも有効です。
ただし、個人事業主は株式会社や法人のオーナーではないため、CEOやpresidentのような肩書は不適切です。代わりに、事業内容に即した肩書を使用することで相手に自分の仕事の具体的なイメージを伝えることができます。
「個人事業主の英語の名刺肩書例」
肩書 | 職種 |
Designer | 製品デザイナー、Webデザイナー、インテリアデザイナーなど |
Writer | Webライター、コピーライター、コンテンツライターなど |
Consultant | ビジネスコンサルタント、マーケティングコンサルタントなど |
Photographer | 商業写真家、ポートレイト写真家、撮影フォトグラファーなど |
Tutor | 語学教師、家庭教師など |
Translator | 翻訳家、通訳士など |
個人事業主の名刺の肩書は、事業の特徴を反映させ、場合によっては「Web designer」や「Marketing consultant」などの専門分野を補足することで、より詳細な情報が伝わります。
屋号の選び方と英語表現
カフェやネットショップといったお店のオーナーが名刺を作成する場合、通常は「屋号+自分の名前+役職」を記載する形式が一般的です。屋号については、業種に応じて適切な表現を選ぶことが大切です。
個人事業主の屋号においては、会社や法人を示す「Ltd.」「Inc.」「Corp.」などは避け、事業の種類に応じた表現を選びましょう。
たとえば、デザイナーや写真家などのアーティスト系の肩書には「Studio」「Gallery」、ネットショップやカフェには「Shop」「Store」、事務所には「Office」を使うのが一般的です。以下に、屋号と役職を組み合わせた名刺の英語表現の例を紹介します。
カフェを経営・運営している場合
CAFÉ ○○〇(屋号)
EMI OSADA(自分の名前)
Owner&Manager(役職)
ネットショップを開業・運営している場合
△△△ Store/Shop
EMI OSADA
Founder&E-commerce Owner
デザイン事務所を経営している場合
◇◇◇ Design
EMI OSADA
Founder&Creative director
個人事業主の入国カード記入法
個人事業主が出入国カードに記載する職業欄には「proprietor」と記載するのが一般的です。職業としてのproprietorは事業の経営者を指し、店舗や事務所を経営する事業者に適した表現と言えます。
一方で、自営業を意味する「self-employed」も問題なく使用できますが、一般的にはproprietorを選ぶケースが多いとされています。どちらの表現を使うかは、どのような事業を行っているかに依存します。
たとえば、店舗やサービスを運営している場合はproprietor、フリーランスとしてさまざまな業務を行っている場合は、self-employedが適しています。
出入国カードに職業を記入する際の具体例
「一般的な表現例」
- Occupation:Sole proprietor
- Occupation:Self-employed
- 「具体的な職種を表現する例」
- Occupation:Freelance Writer
- Occupation:Independent Consultant
- Occupation:Web Designer
個人事業主の関連用語を英語で紹介
個人事業主として活動している際には、特定の用語や手続きがあります。これらの用語や手続きは国によって異なるため、ここでは一般的な英語表現を紹介します。
開業届
アメリカやイギリスには、日本と同じ形式の届出は存在しないため、開業届を表す英語表現は文脈や使用目的によって異なります。一般的には、「Business Registration Form」「Business License Application」「Notification of Business Opening」などの表現が使われます。
例:"I submitted a business registration to the tax office. "
=税務署に開業届を提出しました。
例:"In Japan, a business license application is required to start a new business."
=日本では、新規事業を正式に始めるには事業許可申請が必要です。
会社名
個人事業主の会社名・屋号は「business name」や「trade name」として表現されます。法人の場合は「company name」や「corporation name」が一般的です。
例:"I operate my business under the trade name 'Sunshine Crafts’. "
=「サンシャインクラフツ」という屋号で事業を運営しています。
確定申告
確定申告は「tax return」や「self-assessment tax return」と表現されます。アメリカでは、日本の青色申告に近い利点を得られる申告方法として「Schedule C」というフォームが使用されます。
例:"I have completed my tax return for the year, and all necessary expenses have been included."
=私は今年の確定申告を行い、必要経費をすべて計上しました。
求人
求人に関連する表現では、求人に空きがある「job opening」、スタッフ募集中の状態「Now hiring」、求人情報全体「job listing」、求人広告「recruitment advertisement」などがあります。
求職者の応募を受け付ける際には、「application form」といった応募書類を用意することが一般的です。
例:"Our café is now hiring part-time staff. "
=当カフェでは、現在アルバイトスタッフを募集しています。
口座
事業用口座は「business account」と呼ばれます。銀行口座全般は「bank account」ですが、オンラインで口座を管理する場合は「online banking account」になります。
例:"I opened a business account to manage the finances of my new company. "
=私は新しい会社の財務管理のために、事業口座を開設しました。
個人事業主の英語に関するよくある質問
個人事業主に関連する英語表現は、多岐に渡ります。以下によくある質問を取り上げ、それぞれに対する回答を紹介していきます。
Q1:個人事業主や法人は英語でどう表現しますか?
個人事業主は「self-proprietor」や「self-employed」などで表現されます。法人は「corporation」や「company」、株式会社は「Inc.」や「Ltd.」として表されます。
Q2:個人向けサービスや法人向けサービスはどう表現しますか?
個人向けサービスは「individual service」や「consumer service」、法人向けサービスは「corporate service」や「business service」となります。
例:"We offer personalized services for individuals."
=私たちは個人向けのパーソナライズされたサービスを提供しています。
例:"Our company specializes in corporate consulting."
=弊社は法人向けのコンサルティングに特化しています。
Q3:個人売買と法人間取引はどのように表現されますか?
個人売買は「private sale」や「personal transaction」、法人間取引は「Business-to-business(B to B)」や「corporate sale/commercial transaction」となります。
例:"This item is available through a private sale."
=この商品は個人売買で販売されています。
例:"The company specializes in B2B services."
=その会社は法人向けサービスに特化しています。
Q4:海外向けのネットショップを経営している場合、英語の教材は経費で落とせますか?
海外顧客とのやり取り、英語での商品説明・宣伝に使用する目的で購入した教材であれば、事業に関連する経費として認められる可能性があります。ただし、業務との具体的な関連性を明確に示す必要があります。
一方で、語学留学や英会話教室の受講費用など、事業の規模に対して高額と思われる支出は事業に直接関連がないと判断され、経費として認められない場合があります。
経費計上の可否については、事前に税理士に相談することをおすすめします。教材の購入理由や使用目的を記録し、領収書や教材そのものを保管しておき、税務調査などの際に説明できるように準備しておくことが重要です。
Q5:会社として運営している個人事業主の場合、名刺の肩書はどうしたらいいですか?
会社として運営している場合、「個人事業主」としての肩書ではなく、会社内での役職を基にした肩書を使用するのが一般的です。以下は代表的な肩書の例です。
会社として運営している場合の名刺の肩書例
CEO(Chief Executive Officer) | 最高責任者 |
President | 社長 |
Managing Director | 取締役 |
Owner/Founder | 事業の創業者または経営者 |
General Manager | 部門責任者 |
名刺の肩書は自分で自由に決めるのではなく、社内規程や実際の役割に基づいたものでなければなりません。とくに契約や法的な文書で使用する場面では、正確な肩書を使う必要があります。名刺を作成する際は社内規程や自身の立場を再確認し、適切な肩書を選びましょう。
英語を使う個人事業主のお仕事
英語を生かして個人事業主として活動する方法は多岐に渡りますが、語学力だけでなく、専門知識やこれまでの経験を生かすことが重要です。以下に、英語を生かした個人事業主の仕事例を紹介します。
翻訳者
翻訳者は英語→日本語、日本語→英語の翻訳を行います。翻訳の対象としては、論文やビジネス文書、Webサイト、さらには映画やドラマの字幕翻訳などもあります。専門的な分野に強みがあると、より高い需要が見込まれるでしょう。
通訳
通訳は主に同時通訳を担当し、国際会議やビジネスミーティング、講演会などで活躍します。高い専門性のほか、業界知識が求められる場合もあります。
英会話講師
対面やオンラインで英会話を教える仕事です。企業向けの英会話研修や、英語教材の開発に関わる仕事もあります。個別の生徒を対象に教えるほか、日本語講師としての需要もあるでしょう。
英文ライター
英語でオリジナルのコンテンツを作成する仕事で、Webサイトの記事や書籍の執筆などが対象となります。翻訳とは異なり、独自の構成力やライティングスキルが求められます。
輸入代行
海外から商品を購入し、日本国内で販売するビジネスです。反対に、日本から海外へ商品を輸出することもあります。商品の仕入れ、配送手配、税関申告など、国際的な取引を行う際に英語を活用できるでしょう。
このほかにも、ツアーコンダクターや旅行企画、企業の海外拠点との調整業務など、英語を生かした仕事は多く存在します。個人事業主として成功するためには、語学スキルに加え、専門知識、コミュニケーション能力、マーケティング能力など、幅広い能力が求められるでしょう。
英語で個人事業主としての可能性を広げよう!
個人事業主として成功するためには、さまざまなスキルが求められます。その中でも、英語はビジネスの幅を広げるための大きな強みとなります。
これから英語を活用して事業を展開しようと考えている方は、ぜひこの記事を参考に、ご自身の強みを生かせる分野を見つけてみましょう。
すでに個人事業主として活躍されている方も、英語を効果的に取り入れることで新たなビジネスチャンスを掴み、事業の可能性を広げることができます。
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執筆者名小佐田 絵海
編集企画CWパートナーシップ・フリサプ編集チーム