法人印鑑の種類とその役割を解説

法人 印鑑

本記事では法人印鑑の種類やその役割、作成する際の注意点などについて解説します。

法人設立時や契約書の作成時などに必要とされる印鑑は、デジタル化が進む昨今でも使用する企業が多いのが現状です。

法人を設立する際に用意する印鑑、その作成方法に悩まれている方はぜひ本記事をご一読ください。

法人印鑑とは?

法人 印鑑

はじめに、法人印鑑とは何かについて解説します。

法人印鑑とは、法人が契約書などを作成した際に押印する印鑑の総称を指します。法人印鑑と呼ばれるものの中には、具体的には以下のようなものがあります。

  • 代表者印(会社実印)
  • 銀行印
  • 角印
  • 会社認印
  • ゴム印

それぞれの印鑑は形状や大きさ、役割が異なり、場面に応じて使い分けを行う必要があります。次の章で、それぞれの印鑑の違いについて詳しく解説します。

法人印鑑の役割について

法人 印鑑

ここからは、それぞれの法人印鑑の役割や使用シーンについて解説します。

代表者印(会社実印)

代表者印(会社実印)は、会社の正式な印鑑であり、最も重要な役割があります。

会社設立時に法務局に登録されると同時に登記簿に押印されます。この印鑑は、会社を法的に代表するような重要な契約書や不動産の取引、登記関係の手続きなど、重要な意思決定を証明する書類に押印します。

例えば、融資契約や企業間の取引契約など、会社の財産や法的な権利に影響を与える場面で頻繁に使われます。

このため、代表者印は厳重に保管し、不正利用を防ぐための管理が重要です。法的効力を持つため、押印された書類は会社を拘束するものと見なされ、慎重な使用が求められます。

印鑑を作成する際にもルールがあり、商業登記規則第条3には以下のように記載されています。

印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであってはならない。

引用:e-Gov 法令検索 | 商業登記規則

形状や刻印の内容についての定めはありませんが、一般的には丸型を用い、「会社名+代表取締役印」が刻印されます。

サイズを間違えると法務局へ登録ができませんので、メーカなどへ発注する際は十分な確認が必要です。

銀行印

銀行印は、会社の金融取引に関連する印鑑であり、主に銀行口座の開設や振込依頼、預金の引き出し、融資契約などで使用されます。

銀行印は、金融機関での取引に関する署名として重要な役割を果たし、銀行に登録されている限り、口座の正当な管理者であることの証明にも利用可能です。

金銭の引き出しができるため、不正利用を防ぐ観点からも対外的に使われる代表者印とは分けて作成しておくことをおすすめします。

銀行印については大きさなどの指定は設けられていませんが、16.5ミリ〜21.0ミリ程度の大きさの丸い印影が一般的です。また偽造を防ぐため、篆書体・吉相体・古印体など複雑なフォントを使って作られます。

法人口座開設の際に使用するのが主な用途ですが、銀行印不要というネット銀行も増えています。

角印

角印はその名の通り、四角い形をした印鑑です。

見積書や請求書、契約書などの文書に押されることが多く、会社の公式文書に信頼性や権威を持たせるために使われます。また、社内での承認書類や通知書に角印が使用されることもあります。

角印は代表者印(会社実印)とは異なり法的拘束力がないため、株式取引や不動産取引などの重要な契約では使用することができません。しかし、商習慣上、押印することで文書の正式性や信頼性が高まるため、多くの企業が使用しています。

印面には「株式会社〇〇」などを社名を刻印するのが一般的で、個人事業主の場合は個人名を記載するケースもあります。

大きさについても法的な決まりはないため、自由に作ることができますが、一辺の長さが21.0ミリ〜24.0ミリ程度のものが定番でおすすめです。

会社認印

会社認印は、日常的な事務処理や軽微な文書に使用される印鑑で、会社内部での使用が一般的です。

例えば、稟議書や社内の承認書類、出勤簿や受領書などに押印、また書留や郵便物の受取の際にサイン代わりに利用するといったケースがあります。印面には社名や代表者名が入るケースが多いです。

法的効力を持つ代表者印(会社実印)とは異なり、会社認印は比較的軽い手続きや処理に使用されるため、会社によっては一般社員や担当者が使用することを認めている場合もあります。

ただし、認印が押された文書も、場合によっては会社の正式な意思を示すものと見なされることがあるため、管理は必要です。誤用を防ぐためにも適切な使用ルールを設けておきましょう。

形状は丸型が多く、大きさも15.0ミリ程度〜21.0ミリ程度と幅広く用意されています。

ゴム印

ゴム印は、住所、社名、電話番号、役職名などの情報を簡単に押印するために使われるツールです。ゴムで作られているため、スタンプ感覚で使用でき、複数の項目を一度に押すことも可能です。

封筒や文書の宛名、物品に社名印字する際などに使用されることが多く、手書きや印刷の手間を省くために役立ちます。

ゴム印は法的な効力を持つ印鑑ではないため、主に実務の効率化を目的として使われます。そのため、契約書や重要な文書には使用せず、あくまで事務的な場面でのみ使用してください。

自由にカスタマイズできる点もゴム印の利点で、必要な情報に合わせて内容を変更することが可能です。多くの企業では、日常的な業務で迅速に情報を押印できるように、いくつかのゴム印を常備しています。

大きさや形も自由にカスタマイズ可能で、制作コストが比較的安価なのもゴム印の特徴です。朱肉不要のシャチハタのようなゴム印も販売されています。

法人印鑑を作成する際の注意点について

法人 印鑑

法人印鑑の種類やそれぞれの役割について理解したところで、実際に作成を依頼する際の注意点を解説します。

サイズについて

すでに解説した通り、代表者印(会社実印)以外については、法律で定められた大きさの規定はありません。ただし、商習慣としてそれぞれの印鑑には適正サイズというものが存在します。

法人印鑑を作成する際は、以下の表をご参照ください。また社名の長さによっては、サイズが小さすぎると刻印できないことがあるため、オーダー先にも相談することをおすすめします。

法人印鑑の種類法律によりサイズ規定サイズ
代表者印(会社実印)あり10.0mm以上、30.0mm以内の正方形におさまるもの。
銀行印なし16.5ミリ〜21.0ミリ程度
角印なし21.0ミリ〜24.0ミリ程度
会社認印なし15.0ミリ〜21.0ミリ程度
ゴム印なし用途に合わせて選択

素材について

印鑑は様々な素材を使用して製作することができます。素材については法律などで定められているわけではないため、好みや印影の印象などで選ぶのがおすすめです。

以下の一覧にあるような多様な素材から選択できます。

材質一覧

正宗黒水牛(芯持ち)楓BLACKブラックアグニ
黒壇玄武(黒彩樺)彩樺薩摩本拓
オノオレカンバ牛角(中色)牛角(純白)
ブラストチタンブラストチタンブラックブラストチタンゴールドチタンブラック
チタンゴールドカーボンチタンジュエルズチタンコバルトクロムモリブデン

黒水牛は水牛の角を加工して作られるため、硬度や粘りのバランスが良く、昔から印鑑の素材として人気があります。また、ブラストチタンは耐久性が高く、見た目の高級感も魅力的です。

ぜひ色々と見比べ、好みにあったものを見つけてください。

刻印について

代表者印(会社実印)や銀行員など、契約や取引に使われる法人印鑑については、刻印される文字についても注意が必要です。

不正利用を防ぐためにも、なるべく偽造のされにくい書体を選ぶことが適しています。書体についても法律で定められたものはありませんが、サンプルなどを参考に実際にみて選ぶのがおすすめです。

以下に法人印鑑に使用されることの多いフォントとその特徴を紹介します。

篆書体(てんしょたい)古代中国で使われていた書体で、起源は秦の始皇帝が統一した「小篆」にあります。線が均一で曲線が多く、字形が整っており、古風で荘厳な印象を与えます。
古印体(こいんたい)篆書体を基にして発展した書体で、篆書体よりも線が太く力強いのが特徴です。文字の端が丸く、やや素朴な印象を持っています。
印相体(いんそうたい)印相体は印章専用の書体で、篆書体をベースにしていることが多いです。線が太く、印鑑の形状に合わせてデザインされており、力強く堅固な印象を与えます。
隷書体(れいしょたい)漢代に使われた書体で、篆書体から発展しました。線が太く、抑揚があり、角張った形状が特徴的です。文字の横線が長めで、縦線が短い構造が独特です。
行書体(ぎょうしょたい)楷書と草書の中間に位置する書体で、流れるような筆遣いが特徴です。文字のつながりがあり、スピード感がありますが、崩し過ぎず読みやすいバランスが取られています。
楷書体(かいしょたい)最も標準的で読みやすい書体で、各画が直線的で明確です。文字の形がしっかりと整っており、正確な表現が求められる場合に使われます。

一方で、ゴム印に関しては事務作業の軽減を目的に作られることが多いため、視認性の高いゴシック体や明朝体などで作成するのが一般的です。使用用途に合わせて適切なフォントを選んでいきましょう。

代表者印(会社実印)の登録方法について

法人 印鑑

数ある法人印鑑の中で、代表者印(会社実印)のみが法的拘束力のある印鑑です。ここではどのように実印として登録を行うのかについて解説します。

印鑑登録の方法

法人印鑑を登録するには、事業所があるエリアを管轄する法務局へ「印鑑届書」を提出する必要があります。一般的には、法人の設立登記と同時に印鑑登録を行います。会社の設立を決めた場合は、印鑑の作成も合わせて行いましょう。

印鑑届書は法務局の公式ホームページからダウンロードが可能で、A4用紙1枚で構成されています。

記載する事項については以下の通りです。

  • 登録を行う印影
  • 称号・名称
  • 本店・主たる事務所
  • 印鑑提出者の資格、氏名、生年月日
  • 会社法人等番号(分かる場合のみ)
  • 届出人の住所、氏名、市区町村に提出した印

出典:登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式 :法務局

届出を行う際には印鑑提出者個人の印鑑証明も必要です。法人として登録を行う前に、個人としての印鑑証明も取得をしておきましょう。

印鑑カードの申請

法人としての印鑑証明を取得する際には、印鑑カードの申請が必要です。印鑑登録と合わせて行ってください。

「印鑑カード交付申請書」に必要事項を記載し、提出をします。記載の内容については、「印鑑届書」とほぼ同じです。

印鑑不要の流れもある

法人 印鑑

ここまで印鑑の必要性について解説をしてきましたが、2020年ごろより政府は行政手続き等の見直しを進め、徐々に印鑑の廃止に動き始めている現状もあります。

現状はまだまだ印鑑の必要な場面が多いですが、世の中でどのような動きが行われているのかについても合わせて解説します。

出典:書面規制、押印、対面規制の見直し・電子署名の活用促進について:規制改革:内閣府

会社設立時にオンラインで登記申請を行う場合は印鑑不要

代表者印(会社実印)は会社設立時に登記簿に記載されると解説をしましたが、オンラインの「法人設立ワンストップサービス」を利用して手続きを行う際には代表者印(会社実印)の用意は必要ありません。

代表取締役が本人がマイナンバーカードを使用して、オンラインで登記申請をすることができるようになっています。

ただし会社設立自体は印鑑不要でできるものの、銀行口座の開設や融資を受ける際などには、代表者印(会社実印)の押印が求められる場合があります。

業務を円滑に進めるためにも、時間があるときに代表者印(会社実印)を用意をしておくことをおすすめします。

出典:株式会社の設立登記をしたい方(オンライン申請):法務局

個人事業主の確定申告の際にも印鑑は不要

2021年に行われた税制改正により、2021年4月1日以降の確定申告の際には、提出書類に対する押印が不要となりました。

2021年度以前については、「第1表」「第1表(控)」の2種類の用紙、押印欄がありましたが現在は廃止されています。

出典:税務署窓口における押印の取扱いについて|国税庁

今後は電子印の普及が見込まれる

印鑑廃止の動きがある一方で、ITやデジタル技術の発展に伴い新たに生まれたのが「電子印」です。

「電子印」とは従来の印鑑同様、パソコン上で捺印ができるシステムで、ペーパーレス化が進む昨今注目を集めています。

無料で使えるものから、シリアル番号入りの複製ができない電子印まで様々なサービスが展開されています。

電子印を使えばオンライン上で契約手続きが完了するだけでなく、日頃テレワークで業務を行っているのに押印のためにオフィスに出向かなければならないケースも減らすことができます。

また電子署名法に則り、オンライン上で契約を完了できるサービスなども。

物理的な印鑑の押印をなくし、業務のDX化を推進していきたいと考えている場合は、これらのサービスも合わせて活用することをおすすめします。

電子印や電子署名のサービス提供を行っている事業者の一例です。

  • クラウドサイン | 国内シェアNo.1の電子契約サービス
  • 電子契約なら電子印鑑GMOサイン|導入企業数No.1の電子契約サービス
  • 【公式】電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」|株式会社NXワンビシアーカイブズ
  • 締結だけじゃない、契約の面倒をまるっとおまかせ。 - freeeサイン

法人印鑑は用途にあったものを活用しよう

法人 印鑑

法人印鑑の種類や役割、作成する際の注意点などについて解説しました。

法人印鑑といっても様々な種類があるため、不正利用などの被害を防ぐ観点からも、用途に合わせて正しく活用していきましょう。

代表者印(会社実印)については、大きさのルールが法律で決められているためしっかりと把握した上で作成をしてください。

また契約書や請求書などのやり取りを円滑に進めるためには、電子印や電子署名などもあわせて活用をするのがおすすめです。

執筆者名Tak_1989

編集企画CWパートナーシップ・フリサプ編集チーム

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