「キャリアパスとは何のこと?」
「今の仕事、この先どうなるんだろう…」
このような疑問や不安を抱えていませんか?
明確なキャリアパスがないと将来の方向性が見えず、仕事へのモチベーションも低下しがちです。キャリアパスについて理解し、自分の未来を明確に描けば、理想のキャリアを実現できる可能性が高まるでしょう。
そこでこの記事では、キャリアパスの基本から企業が導入するメリット、個人が意識すべきポイントまで詳しく解説します。理想の未来を切り開くためのヒントとして、ぜひご活用ください。
キャリアパスとは

キャリアパスとは、企業内で従業員が特定の職位・職務に就くまでに必要なスキルや経験、順序を示す道筋のことです。キャリアパスがあると、従業員は自身のキャリア形成において何を学び、どのような経験を積むべきかを明確に理解できます。
企業がキャリアパスを提示することで、従業員は目標を持ち、意欲的に業務に取り組めます。
従来の終身雇用や年功序列が一般的だった時代では、在職年数に応じて職位や給与が上昇していました。しかし現代では、転職が一般的となり、さまざまな経歴を持つ人材が共に働く環境が増えています。
このような状況下で、企業は従業員に対して明確なキャリアパスを示すことが求められているのです。キャリアパスを明示することは、企業にとって経営計画に沿った人材育成・人材配置につながります。
一方、従業員にとっては、自身のスキルや能力が組織内でどの位置にあるのかを把握しやすくなり、目標設定が容易になります。
キャリアパスの具体例
たとえば、システムエンジニア(SE)のキャリアパスを考えてみましょう。新入社員としてSE業務に従事して経験を積んだ後、プロジェクトリーダーとしてチームをまとめる役割を担います。
その後はプロジェクトマネージャーとしてプロジェクト全体を管理し、さらに経験を積んで複数のプロジェクトを統括する立場を目指すことが一般的です。
一方、管理職ではなく専門性を追求する道もあります。特定の技術や分野のエキスパートとしてスキルを深め、専門家として活躍するキャリアパスも考えられます。
キャリアプラン・キャリアデザインとの違い
キャリアパスと混同しやすい言葉に「キャリアプラン」「キャリアデザイン」が挙げられます。
キャリアプランは、個人が将来の職業や仕事の目標を設定し、その実現のためのプロセスを考えることです。
キャリアデザインは、働く人としての理想を実現する計画を描くことを指し、より広く「人生設計」とも捉えられます。
これらの用語は似ていますが、キャリアパスは企業が従業員に提示する具体的な道筋であり、キャリアプランやキャリアデザインは、個人が主体的に考える将来の計画や理想像です。
キャリアパスが注目される背景は?

近年、キャリアパスの重要性が高まっています。その背景には、従来の雇用形態の変化や労働市場の動向が大きく影響しています。
以下では、キャリアパスが注目される背景について詳しく解説していきます。
- 終身雇用と年功序列の崩壊
- 少子高齢化による人手不足
- 個人のキャリア意識の高まり
終身雇用と年功序列の崩壊
かつての日本では、大学卒業後に新卒一括採用で企業に入社し、年齢とともに昇進・昇給する年功序列が一般的でした。そのため、個人が主体的にキャリアを設計する必要性は低く、企業内で自動的にキャリアが形成されると考えられていました。
しかし、近年では終身雇用や年功序列の制度が崩れ、転職が一般的になっています。また、仕事の専門性が高まる中、管理職だけでなく特定分野のスペシャリストとしてキャリアを築く選択肢も増えています。
このような状況下で、企業は社内で描けるキャリアパスを明確に示し、従業員のモチベーションを高める必要性が生じているのです。
少子高齢化による人手不足
日本では少子高齢化が進行し、労働人口の減少が深刻な課題となっています。そのため、企業には限られた人材を効果的に活用し、個々のパフォーマンスを最大化することが求められるのです。
キャリアパスを明確にすることで、従業員のモチベーション向上や求職者へのアピールにつながり、人材不足の解消に寄与します。
個人のキャリア意識の高まり
終身雇用の崩壊や経済の変動を経て、個人の間で「企業は自分のキャリアや人生を保証してくれない」という認識が広がっています。
そのため「自分がこの組織でどのようなキャリアを描けるか」「望むキャリアを実現するにはどうすればよいか」といったキャリア意識が、とくに若手や優秀な人材を中心に高まっているのです。
このような背景から、企業が明確なキャリアパスを提示しないと、人材育成や従業員の定着、採用活動において不利になる可能性があります。したがって、キャリアパスの整備と公開は、企業にとって重要な課題と言えるでしょう。
企業がキャリアパスを重視する理由・メリットとは

キャリアパスが注目される背景には、労働市場の変化や社会的要因が関係しています。ここでは、企業がキャリアパスを重視する理由を整理し、制度を導入するメリットについて解説します。
- 従業員の定着率向上
- 求職者へのアピール効果
- 従業員のモチベーション向上
従業員の定着率向上
キャリアパス制度を導入することで、従業員の離職率を下げられる可能性があります。キャリアの道筋が明確になると、従業員は社内での将来像を具体的に描きやすくなり、安心感を得られるためです。
とある調査では「キャリアパスが明確な企業に魅力を感じる」という若者の声が多く寄せられています。明確なキャリアパスを提示することが、人材定着に大きく貢献することがおわかりいただけるでしょう。
求職者へのアピール効果
キャリアパス制度は、採用活動でも重要な役割を果たします。求職者は就職先を選ぶ際に、研修制度やキャリア形成の支援が充実しているかを重視する傾向があります。
制度が整っている企業は、将来のキャリアを考える際に安心感を与えられるため、求職者にとって魅力的です。キャリアパス制度がしっかり機能している成功事例を共有することで、さらに企業の信頼度が高まります。
こうした取り組みは、採用ミスマッチの防止にもつながります。
従業員のモチベーション向上
キャリアパスが明確に設定されると、従業員は目標を定めやすくなります。目指す役職やスキルが具体化されれば、その実現に向けて努力する動機が生まれます。
たとえば昇進・昇給の条件がわかれば、それに必要なスキルを習得するための行動も起こしやすくなるでしょう。また、モチベーションが高い従業員が増えることで、企業全体の生産性が向上し、企業の業績アップにもつながるでしょう。
企業がキャリアパスを導入する流れ

キャリアパス制度を導入することで従業員の成長を支援し、企業全体の競争力を高められます。ただし、単に制度を設けるだけでは機能しないため、効果的に運用できる仕組みが必要です。
以下では、キャリアパスの導入手順について解説します。
①等級制度の設計
②研修制度の整備
③評価制度づくり
④賃金制度の設定
⑤フォローアップ体制の構築
①等級制度の設計
キャリアパス制度の第一歩として、等級制度を設計しましょう。これは、従業員のキャリアステップを明確にし、どの職位でどのようなスキル・経験が求められるかを定めるものです。
一般的には役職を基準に等級を設定しますが、職務内容やスキルレベルごとに細かく階層を分ける方法もあります。
たとえば「一般職」「リーダー職」「管理職」などの階層を設定し、それぞれに必要なスキルや経験年数を明示すると、従業員が自身のキャリアを具体的にイメージしやすくなります。
②研修制度の整備
キャリアパスを実現するには、従業員が必要なスキルを習得できる研修制度が不可欠です。研修には、実務を通じて学ぶOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)、社外研修やセミナーを活用するOff-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)、自己学習を支援するSDS(セルフ・ディベロップメント・システム)などがあります。
たとえばリーダー職への昇格を目指す従業員には、マネジメント研修やプロジェクト管理の実務経験を提供するなど、段階ごとのスキル向上を支援する仕組みを整えることが重要です。
③評価制度づくり
公平で透明性の高い評価制度を設計することで、従業員のモチベーションを向上させ、キャリアパスの実現を促します。評価基準には、以下の3つの要素を組み合わせるのが一般的です。
- 能力評価…業務遂行能力やスキル習得度が基準
- 業績評価…成果や目標達成度が基準
- 情意評価…勤務態度や意欲が基準
「目標管理制度」を採用し、上司と従業員が目標を共有しながら成長を促す方法も効果的です。また上司や部下など周囲の人から評価してもらう「360度評価」を取り入れる方法でも、より納得感のある評価が可能になります。
④賃金制度の設定
等級や評価制度と連動する形で、賃金制度を設定します。キャリアアップに伴い適切な報酬を得られる仕組みを整えることで、従業員のモチベーションを維持しやすくなります。
たとえば「一般職」「管理職」などの階層ごとに給与テーブル(基準となる表)を設定し、スキルや責任の増加に応じて昇給する仕組みを設けると良いでしょう。
賃金体系の透明性を確保するため、社員がいつでも確認できるようにすることもポイントです。
⑤フォローアップ体制の構築
キャリアパス制度は一度設計すれば終わりではなく、継続的なフォローが必要です。従業員が制度を理解して活用できるようにするため、定期的な面談やフィードバックを実施することが求められます。
たとえば上司とのキャリア面談を定期的に行い、目標の進捗やスキル習得状況を確認することで、適切なサポートができるでしょう。またキャリアアドバイザーを設置し、従業員が相談できる環境を整えるのも効果的です。
キャリアパス導入・運用のポイント

キャリアパスを実際に機能する制度とするには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。以下では、キャリアパスを適切に導入・運用するための要点を解説します。
- ロールモデルを設定する
- 到達点と必要スキルを明確にする
- 従業員の適性を考慮する
- 複数のキャリアパスを用意する
- 従業員の意見を取り入れる
- 柔軟なキャリアパスを設計する
- 定期的に制度を見直す
ロールモデルを設定する
キャリアパス制度を設計する際には、社内で成功した事例をもとに、ロールモデルを設定することが重要です。従業員が自分のキャリアの道筋をイメージしやすくなり、主体的に成長を目指せる環境が整うでしょう。
たとえば、過去に優れた成長を遂げた従業員のキャリアステップを参考にし、どのようなスキルや経験を積めばよいのかを明示すると、具体的な指標となります。
さらに職種ごとに複数のロールモデルを提示することで、多様なキャリアの可能性も示せるでしょう。
到達点と必要スキルを明確にする
キャリアパス制度が機能しない原因の1つに、昇進・昇給の基準が不透明であることが挙げられます。
「評価が高くても昇進しない」「どのスキルを習得すれば希望の職種に就けるのかわからない」といった状況を避けるため、到達点を明確にすることが不可欠です。
たとえば「管理職への昇進には〇年以上の経験が必要」「特定の資格を取得することで職種変更が可能」など具体的な基準を設定すると、従業員は目標を持って成長を続けられます。
従業員の適性を考慮する
キャリアパス制度を効果的に運用するには、従業員一人ひとりの適性を見極めることも大切です。適性を無視したキャリアパスを押し付けると、モチベーション低下や早期離職の原因となります。
リーダーシップに優れた人材がすべて、管理職を目指すとは限りません。専門性を高めたいと考える従業員にはスペシャリストの道を示すなど、個々の志向に応じたキャリアパスを用意しましょう。
複数のキャリアパスを用意する
キャリアパスを昇進の道筋だけに限定すると、従業員の選択肢が狭まり、不満の原因になります。管理職を目指す人もいれば、専門分野を極めたい人、新たな分野に挑戦したい人もいるため、柔軟な選択肢を提供することが大切です。
たとえば「マネジメント職」「専門職」「新規事業開発」など、複数のキャリアパスを用意し、従業員が自身の志向に合った道を選べるようにすることで、企業と従業員の双方にメリットをもたらします。
従業員の意見を取り入れる
企業側が一方的にキャリアパスを決めるのではなく、従業員の意見を反映させることが重要です。ヒアリングやアンケートを活用して個々の希望を把握することで、より実践的なキャリアパス制度を構築できます。
たとえば定期的なキャリア面談を実施し、従業員がどのようなキャリアを描いているのかを把握することで、適切な成長支援が可能です。
柔軟なキャリアパスを設計する
企業の経営環境や、従業員の状況は常に変化します。業績悪化によって役職が減少する場合や、ライフイベントの影響でキャリアプランを見直す必要がある場合も考えられます。
キャリアパスは、柔軟に変更できる仕組みを整えることが大切です。たとえば一定期間ごとにキャリアパスの見直しを行い、環境の変化に対応できる体制を構築すると、従業員も安心して働けるでしょう。
定期的に制度を見直す
キャリアパス制度が形骸化しないよう、定期的な見直しが必要です。たとえばキャリアパス通りに成長している従業員とそうでない従業員の違いを分析し、制度の改善点を洗い出すといった取り組みが有効です。
また、社会情勢や業界のトレンドを踏まえ、キャリアパスの方向性を適宜調整することも行う必要があります。リモートワークの普及に合わせて働き方の柔軟性を考慮したキャリアパスを設定するなど、変化に対応できる体制を整えましょう。
キャリアパスで企業も個人も成長できる

キャリアパスは企業が従業員に示す成長の道筋であり、個人が主体的にキャリアを考える上でも重要な指標となります。企業がキャリアパスを導入することで人材育成が効率化され、従業員のモチベーションや定着率の向上につながるのです。
一方で、個人にとっても、自身のキャリア目標を明確にしてスキルを磨く指針となり、キャリアパスがあると転職市場でも有利になります。終身雇用や年功序列が崩れた今、企業も個人もキャリア形成の在り方を見直す必要があるでしょう。
明確なキャリアパスを描くことで企業は競争力を高め、従業員は充実した働き方を実現できます。まずは自身の目標を見直し、どのような未来を目指すのかを考えてみましょう。
執筆者名Ruben
編集企画CWパートナーシップ・フリサプ編集チーム